ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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エルフは草食系か脳筋系か?

クリスマスも近いこのごろ。
みなさまいかが いやツイッターでの狭い範囲でなら存じております。元気な人も風邪をひいている人も

突然ですが、エルフといえば、トールキン原作のLOTR映画が世に出るまでは妖精、つまりフェアリーを少しかっこよくいったようなイメージだったと思います。羽が生えてふわふわしている。

けれどもLOTRのレゴラスがでてきて、やたら筋肉質になりました。フェアリーとは異なるエルフのイメージが世間に確立されていきました。
それでも世間一般のエルフは草食ぽいです。その話題をツイッタのTLでみるたび、束エルフは肉食べます。
と心のなかで唱えています。まあ、余談です。

束エルフはわたしのいとしのエルフです。大好きです。しかし視覚的イメージが難しい。
束エルフはめんどうです。種族がいっぱいあり、歴史も様々で、原作者であるトールキン教授のイメージも経年変化があるようです。

というこっとで今回は、原作者のトールキン教授が描いたエルフを見てみましょう。
教授は絵がバリバリ上手いです。ホビット表紙のカバーイラストが原作者であることを知らないかたもいるでしょう。
素人です信じられん。ご本人も自分の絵を挿絵にするなんてとんでもない的なことをおっしゃっていますが、美しくかわいいイラストは並のイラストレーターでは太刀打ちできないクオリティです。

そんな教授のエルフ。
どんなんやねん。
いやそれがな
教授、絵上手なんですが、たまに指摘がありますが、人体の造詣についてはやはりきちんと勉強したプロ顔負けというわけにはいかないのでした。

うん。

著作権上のこともあるので、わたしがてきとーに教授が描いたエルフをもとにしたイラストを貼りますね。
こんなんです。これは、評論社の『ファーザー・クリスマス サンタ・クロースからの手紙』に出てくるエルフを参考にしました。

北極

次はべレグです。ハモンド&スカル社のトールキンイラスト集のNo,54を参考にしました。べレグの右上にぐでんと細長いグウィンドールがいますが割愛¨¨。
べレグ

ちっさかったらクリックで大きくなります(大きくなりすぎるのでツラいです)。

まあ、割と細長くて、足は筋肉質ですね。髪は基本長髪ぽいですが、短いエルフもいるようです。
あと、先細りの靴を履いているようです。歩きにくくないかね?

はっきり言って

参考になりません。


しかし、ふわふわの妖精路線はないと考えてよさそうです。北極エルフ(かってにそう呼んでごめんなさい)は、ものすごくフェアリーぽくもなければ、今の「エルフ」ぽくもありません。なんといえばいいのか、MSワードの無料イラストに出てくるヒトに少し似ています。緑と赤の服(二パターン)があって、サンタさんが赤の上衣に緑のズボンという設定がかわいいですね!
カワ(・∀・)イイ!!ですね!!

そして、ベレグ¨¨。なんで髭はえてんねん。
髭はキアダンみたいな化石になるまで(なってないけど)長く生きたエルフに生えるものではなかったのか?

ただし、ベレグがゆるいウェーブの長髪というのは多分いいことでしょう。
シルマリルおよび、遺稿集などを読むと、エルフがどのような服装をしていたのか、多少の描写がありますが、長いマントだったり、頭に冠だったり、宝石だったりです。あまり細かくはないですね。ざっくりしています。ただ、

一番わたしが困惑したのは、フェアノール(とその息子)たちの兜に羽根飾りがついている。
というところです。

フランスの騎兵隊がたしかそんな兜をかぶっていました。あとローマ時代の兜も羽根がついていました。
時代がむちゃくちゃではないか?!
余談に逸れすぎました。

ここまで書いてなんとなく結論めいたものが出ました。
わりと、細いが、筋肉はある。先細りの靴をはいている。
のがトールキンエルフの特徴かもしれない。
かもしれないなのは、実例が少なすぎるからです。

ではでは。みなさまよいクリスマスを!!


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エルべレス・ギルソニエル!



タイトルは「ビルボとフロドのお誕生日おめでとうヾ(*´∀`*)ノ」ではなく、
キリス・ウンゴルで窮地に陥ったサムのセリフ
「嗚呼エルべレス、星を輝かせるものよ」
です。ペカーッツ

アルダ神話の女神さま、すなわちヴァルダ様のことです。星を創りし女神。

今回はそのヴァルダ様が一体どんな星を創造なさったのかがテーマです。
ヴァルダ様、ずいぶん太古に二度ほど星々を創りましたが、一度目はどんな星を創ったのか書かれていません。
書かれていません……。
その次、イルーヴァタールの初めの子等、つまりエルフが目覚める直前にまた創ります。
このことは割と詳しく書いてあります。
テルぺリオンの大桶から銀の露を取って新しい星々を創ったのです。
『シルマリルの物語』第三章、「エルフ達の到来と虜囚となったメルコールのこと」を読みましょう。
新作の星がエルフ語で、列挙されています。そのうちいくつかの星はわたしたちの見ている空の星と対応していますが、全部ではありません。
対応してないのはどうなってんの?

(゜-゜)
(゜-゜)

ではここで、教授の遺稿集『The History of Middle-earth』10巻の巻末にある、息子クリストファー氏による「星の名前」に関する解説を紹介いたしましょう。
この解説によると、星の名前、特に惑星に関して、教授は実際どの星に相当するか、シルマリルの草稿に記号を記して表していたようです。草稿は1951年頃のもので、それぞれの星の名前の上にアルファベットで記号、あるいは略語が書き入れられています。

簡単な表にしてみました。

星の名前 (草稿につけた略語)   シルマリル巻末の説明     相当する惑星
カル二ル、Carnil (M)         (赤い)星の名前          火星
ルイニル、Luinil(なし)          青い光を放って輝くものの意 (海王星?)    
ネーナール、Nenar (N、のちに抹消) 星の名         (天王星?)
ルンバール、Lumbar(S)         星の名           (土星?)
アルカリンクウェ、Alcarinque(Jup)   輝かしきもの       木星
エレンミーレ、Elemmire(M)  .     星の名前            (水星?)

Jupという表記があきらかな、アルカリンクウェは木星、赤という意からカル二ルが火星なのはほぼ確定でしょう。またルンバールも頭文字からサターン、すなわち土星しかありません。またカル二ルが火星(Mars)なら、同じMでもエレンミーレは水星(Marcury)となります。残るは表記のないルイ二ルと、Nが抹消されたネーナールです。

1990年発行のVinya Tengwarに掲載された、Jorge Auinonez氏とNed Ragett氏の記事によると、ネーナールの抹消は、海王星(ネプチューン)にしようとしたが、気が変わって、ルイニルを海王星にし、結果ネーナールはウラヌス(天王星)になったのだろう、とのこと。
この説に対し、クリストファ氏は、
「明るく見える火星、木星、土星はいいとして、肉眼でほぼみえないウラヌス(天王星)や、ネプチューン(海王星)をヴァルダが創造するだろうか?」
と疑問を提示はするものの、教授自身の楽しみのために、惑星の名前をあれこれと考えることもあるだろうと、ほぼ同意しています。

惑星以外の星の名前も見ていきましょう。新しく創った星々に加えて、
「多くの古い星々を集めて、アルダの天空に印として填め込んだもの」
という記述があります。これはいわゆる星座ですね。名前とシルマリル巻末のインデックスを引用します。

ウィルワリン  クウェンヤ語で蝶を意味する。恐らくカシオペアではないかと思われる。
テルメンディル 星座の名前 
ソロヌーメ    星座の名前  
アナルリーマ  星座の名前 
ネメルカマール 空の剣士の意。オリオン座のこと
ヴァラキアカ   ヴァラールの鎌、大熊座
そして
ヘルルイン    星のシリウスのこと

ヘルルインは、エルフが目覚める直前にできた星です。

具体的な星座名がないものもありますね。 
トールキンゲートウェイで検索してみると、エルフ語の語彙から次のような推察がなされています。
ソロヌーメ は「鷲」と「西」でわし座?
アナルリーマは、「太陽」と「境界で、冠座かペガサスの四角?
という感じ。

教授のことだから、何の関連のない名前を付けることはなさそうですね。

アルダの星神話に関しては、1915年代から1920年代ぐらいの初期のものや、Myths Transformedで変更された天体の仕様についても非常に興味深いのですが、長くなるのでまた機を改めましょう。

ところで、恒星であれ、惑星であれ、アルダの星はほぼヴァルダ様製作なのですが、金星だけは特別で、エアレンディル(とヴィンギロト)です。かなり特異なことです。そんで光ってるのって、エアレンディルご本人じゃなくて、頭に乗っかってるシルマリル。
ですよね。
シルマリル……
フェアノールが創ったシルマリル……

実はここらへんに教授のトリックをものすごく感じたりします。


以下参考文献、引用サイト
  『シルマリルの物語』

The History of Middle-earth 10巻

トールキンゲートウェイ
ソロヌーメ
アナルリーマ

この記事は、Tolkien Writing Day(http://bagend.me/writing-day/)に参加しています!!









category: 読書感想

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ゴンドール 執政の名前に見る「ゴンドリン伝説」

指輪を読んだ後、ゴンドールの歴代執政を見、その後シルマリルを読んで、HoMeとかおわらざりしとか読んだ後に、再びゴンドールの歴代執政を見てみると気付くことがある。
気付くというより、唖然とすることである。
とりあえずゴンドール歴代執政名をウィキさんから抜き出してみるとこうなる。

1. マルディル・ヴォロンウェ(Mardil Voronwë) 2080年
2. エラダン(Eradan) 2116年
3. ヘリオン(Herion) 2148年
4. ベレゴルン(Belegorn) 2204年
5. フーリン1世(Húrin I) 2244年
6. トゥーリン1世(Túrin I) 2278年
7. ハドル(Hador) 2395年
8. バラヒア(Barahir) 2412年
9. ディオル(Dior) 2435年
10. デネソール1世(Denethor I) 2477年
11. ボロミア(Boromir) 2489年
12. キリオン(Cirion) 2567年
13. ハルラス(Hallas) 2605年
14. フーリン2世(Húrin II) 2628年
15. ベレクソール1世(Belecthor I) 2655年
16. オロドレス(Orodreth) 2685年
17. エクセリオン1世(Ecthelion I) 2698年
18. エガルモス(Egalmoth) 2743年
19. ベレン(Beren) 2763年
20. ベレゴンド(Beregond) 2811年
21. ベレクソール2世(Belecthor II) 2872年
22. ソロンディア(Thorondir) 2882年
23. トゥーリン2世(Túrin II) 2914年
24. トゥアゴン(Turgon) 2953年
25. エクセリオン2世(Ecthelion II) 2984年
26. デネソール2世(Denethor II) 3019年


使いまわしかよ教授!!
と誰しもが思うに違いない。
クリストファさんも、当時未出版であったシルマリルからの名前の拝借は、よくあることだとおっしゃっておられる。が
ついでにアルノールの歴代王の名前を調べてみた。つかいまわしっぽいのは、べレグぐらいであった。その他似ているのはあったが、ゴンドール執政は他に比べて際立ってひどいようだ……。

しかし、ここで負けてはいけない。
タダの使いまわしではないという方向性を少し探ってみたい。
おそらくは、ゴンドールでは、ドワーフの首飾りや、ゴンドリンの陥落なんぞは子供でも知っているいわゆる「昔ばなし」的なものになっていて、そこに出てくる登場人物をつけるのが流行ったとか……。
そうなると、あまりにも不幸な結末であるトゥーリンの名前をよく子供に付けるという……おお……。
ディオルもいまいちだし。





詰まったので他のこと考える。
わりと繰り返し同じ名前が出てくることから、ゴンドールでは一人ひとりの名前を捻くりだすのではなく、既出の名前の中から任意に選ぶのが主流になっていたのだろうということ。
そして人気の名前がフーリン、トゥーリン(やめた方が……)、エクセリオン……。
エクセリオンいいじゃん‼‼ あとエガルモスも‼ 
でもトゥーリンはどうなのか?
フーリンやトゥーリンはいわゆるジョンやマイケルみたいなものだったのかも。
だったのかもしれないが、運が悪そうで怖い。

とか考えてました。もう少し広範に調べ物をして書きたかったのですが、今回は時間切れで。
ではみなさま楽しい夏至祭を!!

参加しています→  http://bagend.me/writing-day/

ウィキさんゴンドールの執政

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教授、ケレゴルムとマグロールとベレンとル―シエンの話がよくわかりません

(この記事は2016年4月6日のTolkien Writing Dayに参加しています!!)

四月六日はエルフ新年かつサムの誕生日だそうです。

未邦訳稿を紐解きつつブログを書かれている方もいらっしゃるでしょうか...(= =) トオイメ目

ところで、出版された『ホビット』、『指輪物語』、はともかく、トールキン教授(以下教授)の中つ国神話諸草稿を読むに当たって発せられると予想される呟きに、
「またかよ」
ってのがあります。
基本同じ話を、出版決まってないからといって、あれこれ手法を変えて何回も描き直す教授。
さっさと出版してしまえばよかったのよアンウィンさん……。

そんなわけで
「ベレンとルーシエン」的な話が古いのでは二つぐらいあります。
ひとつめは ”The History of Middle-earth” の二巻にあるもので、その次が、三巻にある‟The Lay of Leithian"です(1*)。

というわけで
今回は「ベレンとルーシエン」の話がテーマ



ではありませんΣ(゚д゚lll)ガーン。

これまた何種類かある‟The Lay of Leithian"の草稿がテーマです……。
導入部クリストファさんが初期草稿をいくつか紹介してるんですがその中でなんか変なのが

なんか変なのが

あるのです……(DELRAY版で194ページぐらい)。

それは草稿Aと名付けられた短いものです。なにが変なのかというと
まず、ベレリアンド(ブロセリアンド)の金髪エルフ王がケレゴルムです。
娘が金髪のメリロットです。
求婚者がイグノール(Egnor)の息子マグロールです。

シンゴルがケレゴルム?
メリロットがルーシエンで金髪?
そしてマグロールがベレンっていったいこれはなんなんだ?
解説してるクリストファさんも解釈に苦しんでいる様子です。

ですが、この短い草稿は多分「ベレンとルーシエンのお話し」ではないんじゃない?
てゆーのがオルセン教授




「だーって、ルーシエンが金髪なんてありえなーいい!! モデル奥さんなんだから!! 奥さんが清書してんだから!! ないでしょ!!」ですと!

では一体これはなんなんですか?

「これはね、オリジナルか脚色かわかんないけど、なんかの詩(ブレトンレイ)として書いたんだよ(多分)。『航海譚(2*)』とかあるじゃん、『領主と奥方の物語(3*)』とかもあるじゃん、あれみたいに~(⌒∇⌒)」

そ、そーなんですかオルセンさん。
そう考えてるのはオルセン教授だけではなくて、ウェブでサーチしたら下記の論文にも同様のことが書かれていました。

Alyssa House-Thomas
Professors T. Shippey and N. Goering In Search of Asterisk-Poetry: The Lay of Leithian as Breton lai


それではどんな物語を書くつもりだったのでしょう?
「わっかんないね!(^.^)」
ってオルセン教授。

しかしキーワードはありますがな。



まず初期のベレリアンドとしても使われていた地名
ブロセリアンド(broceliande)
(ウィキにリンクさせてます)が出てくること。
ブロセリアンドはアーサー王伝説と関わりの深い地名なので、おそらくアーサー王伝説にからんだ何か
あと、王女の名前がメリロット(Melilot)
ホビットの名前としてもでてくるみたいです。
この名前、植物なんですが、語源を溯るとMeliが蜜で、liotがロータス、つまり蓮なんだそうな。
すごく平沢進ぽい気がしますが、日本名はセイヨウエビラハギです。

話はそれましたが、要はルーシエンがナイチンゲールで鳥類なら、こちらはメリロットで植物的な要素を絡めた、かつ、金髪の妖精王がいる、アーサー王伝説的な妖精物語を書こうとしたのではないかと思います。
マグロールのベレン的な活躍があるかと思うとわくわくしますねヾ(*´∀`*)ノ

ケレゴルムが金髪で、マグロールに妻がいたっていうのも、もしかしたら、この書かれざる物語詩の残滓だったりして。
もっとも全忘却の河の彼方にある可能性もありますが。


メリロットのフリー画像探せなんだので、菜の花なんぞ
入れておくわね……

菜の花


参考文献

(1*)The History of Middle-earth Ⅲ The Lays of Beleriand by J.R.R.Tolkien
amazon
(2*)『航海譚』(Imram) J. R. R. Tolkien, 辺見葉子訳 ユリイカ(2002年4月臨時増刊号)
(3*)『領主と奥方の物語』(The Lay of Aotrou and Itroun) J. R. R. Tolkien, 辺見葉子訳ユリイカ(1992年7月号)

菜の花画像お借りしました→http://digibibo.com/blog-entry-1716.html

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1937年12月16日の手紙より……その2: トールキンはケルトが好き? 嫌い?


前回と引き続き、さやうぇんさん主催のトールキンが好きな人のためのアドベントカレンダー
に参加しています(*´▽`*)

それでは、1937年12月16日の手紙から、トールキンはケルトが好き? 嫌い? (;^ω^)

とりあえず、手紙の中で、
Needless to say they are not Celtic!
と叫んだのは何故か? 

からいきましょう。

まず、これは
「シルマリルリオン」はケルティックである」
という読者の感想を受けての発言だということを念頭に置かねばなりません。そして実はその理由ははっきりしています。

トールキンの創作神話「シルマリルリオン」は、アングロサクソン系を始祖とする祖国イングランドのためのもので、ケルト系のウェールズやスコットランドのためのものではないからです。

「シルマリルの物語」の序文を引用してみます。

「我が国には、自分のものと言える(つまり英語という言葉と、イギリスという国土に結びついた)物語がありませんでした。(中略)もちろん、アーサー王伝説の世界はありました。今もあります。確かに強力な存在ですが、完全にイギリスのものかというと、そうではありません。」

邦訳ではイギリスとなっているので、少し混乱しますが、その歴史を激しく大ざっぱに要点だけかいつまむと下記になります。↓

 ブリトン島の歴史
 石器時代、人種不明。
 BC700年頃、ケルト人が大陸から渡来。
 4世紀     西部からアイルランド人、東部からサクソン人、アングロサクソン人渡来。
 9世紀    ノルマン人来寇

他にも細かいことは当然あるのですが割愛します(し過ぎてるけど)。

このサクソン人、アングロサクソン人を祖とする国(イギリスの中核をなす地方)がイングランドです。トールキンの祖先はアングロサクソン人でした。上記の序文の中の「イギリス」は原文ではEnglishであり、大まかにはイングランドを指します。
トールキンは、イングランドのための神話、アングロサクソン人のための神話を作りたかったということです。

トールキンの「シルマリルリオン」がケルト風であると評した読者の感想には、
it has something of that mad, bright-eyed beaty that perplexes all Anglo-Saxons in face of Celtic art
とありました。

簡単に訳しますと。
「いかれたような輝く目をした美しさといったなにかがあるが、ケルト風芸術を目の当たりにして、アングロサクソン人は困惑させられるだろう」
いやそのアングロサクソン人のために書いた神話なんです。
これは、ご本人にとってあまりにも不本意な反応だったことでしょう。そりゃー Not Celtic! と叫びたくなりますよね……。

では本題

トールキンはケルトが好き? 嫌い?(ブチブチ←花びらをむしる効果音)



上記の序文の続きを見てみましょう。

「それは私にとって望ましい資質をそなえていなければなりません。冷涼で澄明なもの、私たちの国の、”大気”のかぐわしく匂うものでなければなりません。それは、時にケルト的と呼ばれる、魅力的な、とらえがたい美(といっても、純粋な古代ケルトの書物には滅多に見いだされないものではあるのですが)を所有すると同時に、粗野なものが取り除かれた、’格調高いものでなければなりませんし……」

(;゚Д゚)

教授、1937年の手紙と全然反対のこと言ってる……。


と驚くのは早計です。

「……時にケルト的と呼ばれる、魅力的な、とらえがたい美(といっても、純粋な古代ケルトの書物には滅多に見いだされないものではあるのですが)……。」
に注目してみましょう。
ここには時にケルト的と呼ばれる、魅力的な、とらえがたい美
とあり、
純粋な古代ケルトの書物には滅多に見いだされないもの
との対比が見られます。

つまり、トールキンが目指したのは、「ケルト的なもの」でり、ケルト文化(あるいは神話)そのものではないのです。ではその「ケルト的なもの」とは何でしょう。

カーディフ大学の講師ディミトラ・フィミ氏の、トールキンとケルトに標準をあてた論文、
“Mad” Elves and “Elusive Beauty”: Some Celtic Strands of Tolkien’s Mythology
に、その解答が示されています。

まず、トールキンの「English and Welsh」から下記が引用されています。、
Beowulf sounds much more "Celtic" since it is "full of dark and twilight, and laden with sorrow and regret" than any original Celtic material 
(私訳:べーオウルフは「闇と薄明に満ち、悲しみと後悔に覆われているからこそ、大本のケルトのものよりもより『ケルト風』である)

そして、Fimi氏は、トールキンの言うケルトの「とらえがたい美(Elusive beauty)について

and it is here, I think, quite clear that he refers exactly to the romantic idea of ―Celticness, with its supposedly sorrowful tone and twilight setting,
(私訳:ここでトールキンが言わんとしていることは、ロマンティックなケルト的観念、すなわち 悲嘆に満ちた、薄明の中にあるとされているものでしょう)

と説明しています。

具体的には、

ラッカムのアーサー王の挿絵

みたいな感じでしょうか? フィミ氏は他にも、バーン・ジョーンズ、ウィリアム・モリスの名前を挙げていました。つまり、19世紀のラファエロ前派的な雰囲気を思い描けば大体合っていそうです。要はアレンジされたケルト風ということのようです。

では、トールキンの嫌いなケルトを見つけてみましょう。
それは、「純粋な古代ケルトの書物にひんぱんに見いだされるもの」で、「(ロマンティックなケルトから)取り除かれた粗野なもの」で、
「鮮明でありながら、割れた色硝子のように無秩序であるように思えるもの」です。

フィミ氏によると、bright coler(鮮明)は、例えではなく、ケルト神話によく出てくる原色のことを指しているとのことです。また、トールキンはよくケルトを「魔法の袋」と例え、なにか放り込むと、どんなものでも出てくる、と批判しています。おそらくは、その無節操さを嫌ったのではないかと。

もっともその好き嫌いの傾向は年を経るにしたがって、ケルトにより好意的な方に傾いていったようですが。

そして、もともと好きだったウェールズ語がもっと好きに(o^―^o)ニコ


最後に、ウェールズ語とアイルランド語について少し。

ケルト系の言葉は数多くあります。トールキンが最も愛したのはウェールズ語であることは確かでしょう。しかしあまり好きでない言葉もあるのです。
それは……


アイリッシュ

ですΣ(゚д゚lll)ガーン。ゲール語といった方が分かりやすいかもしれませんが。

1955年10月の講義より
I go frequently to Ireland (Eire: Southern Ireland) being fond of it and of (most of) its people; but the Irish language I find wholly unattractive.”(私はしばしばアイルランドに行くが、その地や人々は大体好きなのだが、アイルランドの言葉にはまったく魅力を感じない)

1967年8月の手紙には
I have no liking at all for Gaelic from Old Irish downwards, as a language,(私は言語的に、古アイルランドを祖とするゲール語は好まない)

(っω・`。)


まとめましょう。

1937年の手紙のケルト嫌い発言は
1.そもそも「シルマリルリオン」はアングロサクソンのための神話だった。
2.ロマンティックにアレンジされたケルトは好きだけど、原色きらきらで矛盾だらけの古代ケルトは好みじゃない。
3.おなじケルト系の言葉でもウェールズは好き。アイリッシュは……どうもダメ。


てな感じでしょうか。まったくややこしい人ですね!!


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

長々と書いてしまいましたが、
ここまでお付き合いありがとうございます! これでも短くしたのです!!

もっとこのモリアの奥を掘り進みたいかたは下記をご参照くださいませ。フフフ……。




Fim氏のインタビュー

トールキンとアイルランド






字ばっかりで寂しいので最後に私の好きなバーン=ジョーンズ(教授も好きだと思う……)↓
私の好きなバーン=ジョーンズ(教授も好きだと思う)


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