ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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教授、ケレゴルムとマグロールとベレンとル―シエンの話がよくわかりません

(この記事は2016年4月6日のTolkien Writing Dayに参加しています!!)

四月六日はエルフ新年かつサムの誕生日だそうです。

未邦訳稿を紐解きつつブログを書かれている方もいらっしゃるでしょうか...(= =) トオイメ目

ところで、出版された『ホビット』、『指輪物語』、はともかく、トールキン教授(以下教授)の中つ国神話諸草稿を読むに当たって発せられると予想される呟きに、
「またかよ」
ってのがあります。
基本同じ話を、出版決まってないからといって、あれこれ手法を変えて何回も描き直す教授。
さっさと出版してしまえばよかったのよアンウィンさん……。

そんなわけで
「ベレンとルーシエン」的な話が古いのでは二つぐらいあります。
ひとつめは ”The History of Middle-earth” の二巻にあるもので、その次が、三巻にある‟The Lay of Leithian"です(1*)。

というわけで
今回は「ベレンとルーシエン」の話がテーマ



ではありませんΣ(゚д゚lll)ガーン。

これまた何種類かある‟The Lay of Leithian"の草稿がテーマです……。
導入部クリストファさんが初期草稿をいくつか紹介してるんですがその中でなんか変なのが

なんか変なのが

あるのです……(DELRAY版で194ページぐらい)。

それは草稿Aと名付けられた短いものです。なにが変なのかというと
まず、ベレリアンド(ブロセリアンド)の金髪エルフ王がケレゴルムです。
娘が金髪のメリロットです。
求婚者がイグノール(Egnor)の息子マグロールです。

シンゴルがケレゴルム?
メリロットがルーシエンで金髪?
そしてマグロールがベレンっていったいこれはなんなんだ?
解説してるクリストファさんも解釈に苦しんでいる様子です。

ですが、この短い草稿は多分「ベレンとルーシエンのお話し」ではないんじゃない?
てゆーのがオルセン教授




「だーって、ルーシエンが金髪なんてありえなーいい!! モデル奥さんなんだから!! 奥さんが清書してんだから!! ないでしょ!!」ですと!

では一体これはなんなんですか?

「これはね、オリジナルか脚色かわかんないけど、なんかの詩(ブレトンレイ)として書いたんだよ(多分)。『航海譚(2*)』とかあるじゃん、『領主と奥方の物語(3*)』とかもあるじゃん、あれみたいに~(⌒∇⌒)」

そ、そーなんですかオルセンさん。
そう考えてるのはオルセン教授だけではなくて、ウェブでサーチしたら下記の論文にも同様のことが書かれていました。

Alyssa House-Thomas
Professors T. Shippey and N. Goering In Search of Asterisk-Poetry: The Lay of Leithian as Breton lai


それではどんな物語を書くつもりだったのでしょう?
「わっかんないね!(^.^)」
ってオルセン教授。

しかしキーワードはありますがな。



まず初期のベレリアンドとしても使われていた地名
ブロセリアンド(broceliande)
(ウィキにリンクさせてます)が出てくること。
ブロセリアンドはアーサー王伝説と関わりの深い地名なので、おそらくアーサー王伝説にからんだ何か
あと、王女の名前がメリロット(Melilot)
ホビットの名前としてもでてくるみたいです。
この名前、植物なんですが、語源を溯るとMeliが蜜で、liotがロータス、つまり蓮なんだそうな。
すごく平沢進ぽい気がしますが、日本名はセイヨウエビラハギです。

話はそれましたが、要はルーシエンがナイチンゲールで鳥類なら、こちらはメリロットで植物的な要素を絡めた、かつ、金髪の妖精王がいる、アーサー王伝説的な妖精物語を書こうとしたのではないかと思います。
マグロールのベレン的な活躍があるかと思うとわくわくしますねヾ(*´∀`*)ノ

ケレゴルムが金髪で、マグロールに妻がいたっていうのも、もしかしたら、この書かれざる物語詩の残滓だったりして。
もっとも全忘却の河の彼方にある可能性もありますが。


メリロットのフリー画像探せなんだので、菜の花なんぞ
入れておくわね……

菜の花


参考文献

(1*)The History of Middle-earth Ⅲ The Lays of Beleriand by J.R.R.Tolkien
amazon
(2*)『航海譚』(Imram) J. R. R. Tolkien, 辺見葉子訳 ユリイカ(2002年4月臨時増刊号)
(3*)『領主と奥方の物語』(The Lay of Aotrou and Itroun) J. R. R. Tolkien, 辺見葉子訳ユリイカ(1992年7月号)

菜の花画像お借りしました→http://digibibo.com/blog-entry-1716.html
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1937年12月16日の手紙より……その2: トールキンはケルトが好き? 嫌い?


前回と引き続き、さやうぇんさん主催のトールキンが好きな人のためのアドベントカレンダー
に参加しています(*´▽`*)

それでは、1937年12月16日の手紙から、トールキンはケルトが好き? 嫌い? (;^ω^)

とりあえず、手紙の中で、
Needless to say they are not Celtic!
と叫んだのは何故か? 

からいきましょう。

まず、これは
「シルマリルリオン」はケルティックである」
という読者の感想を受けての発言だということを念頭に置かねばなりません。そして実はその理由ははっきりしています。

トールキンの創作神話「シルマリルリオン」は、アングロサクソン系を始祖とする祖国イングランドのためのもので、ケルト系のウェールズやスコットランドのためのものではないからです。

「シルマリルの物語」の序文を引用してみます。

「我が国には、自分のものと言える(つまり英語という言葉と、イギリスという国土に結びついた)物語がありませんでした。(中略)もちろん、アーサー王伝説の世界はありました。今もあります。確かに強力な存在ですが、完全にイギリスのものかというと、そうではありません。」

邦訳ではイギリスとなっているので、少し混乱しますが、その歴史を激しく大ざっぱに要点だけかいつまむと下記になります。↓

 ブリトン島の歴史
 石器時代、人種不明。
 BC700年頃、ケルト人が大陸から渡来。
 4世紀     西部からアイルランド人、東部からサクソン人、アングロサクソン人渡来。
 9世紀    ノルマン人来寇

他にも細かいことは当然あるのですが割愛します(し過ぎてるけど)。

このサクソン人、アングロサクソン人を祖とする国(イギリスの中核をなす地方)がイングランドです。トールキンの祖先はアングロサクソン人でした。上記の序文の中の「イギリス」は原文ではEnglishであり、大まかにはイングランドを指します。
トールキンは、イングランドのための神話、アングロサクソン人のための神話を作りたかったということです。

トールキンの「シルマリルリオン」がケルト風であると評した読者の感想には、
it has something of that mad, bright-eyed beaty that perplexes all Anglo-Saxons in face of Celtic art
とありました。

簡単に訳しますと。
「いかれたような輝く目をした美しさといったなにかがあるが、ケルト風芸術を目の当たりにして、アングロサクソン人は困惑させられるだろう」
いやそのアングロサクソン人のために書いた神話なんです。
これは、ご本人にとってあまりにも不本意な反応だったことでしょう。そりゃー Not Celtic! と叫びたくなりますよね……。

では本題

トールキンはケルトが好き? 嫌い?(ブチブチ←花びらをむしる効果音)



上記の序文の続きを見てみましょう。

「それは私にとって望ましい資質をそなえていなければなりません。冷涼で澄明なもの、私たちの国の、”大気”のかぐわしく匂うものでなければなりません。それは、時にケルト的と呼ばれる、魅力的な、とらえがたい美(といっても、純粋な古代ケルトの書物には滅多に見いだされないものではあるのですが)を所有すると同時に、粗野なものが取り除かれた、’格調高いものでなければなりませんし……」

(;゚Д゚)

教授、1937年の手紙と全然反対のこと言ってる……。


と驚くのは早計です。

「……時にケルト的と呼ばれる、魅力的な、とらえがたい美(といっても、純粋な古代ケルトの書物には滅多に見いだされないものではあるのですが)……。」
に注目してみましょう。
ここには時にケルト的と呼ばれる、魅力的な、とらえがたい美
とあり、
純粋な古代ケルトの書物には滅多に見いだされないもの
との対比が見られます。

つまり、トールキンが目指したのは、「ケルト的なもの」でり、ケルト文化(あるいは神話)そのものではないのです。ではその「ケルト的なもの」とは何でしょう。

カーディフ大学の講師ディミトラ・フィミ氏の、トールキンとケルトに標準をあてた論文、
“Mad” Elves and “Elusive Beauty”: Some Celtic Strands of Tolkien’s Mythology
に、その解答が示されています。

まず、トールキンの「English and Welsh」から下記が引用されています。、
Beowulf sounds much more "Celtic" since it is "full of dark and twilight, and laden with sorrow and regret" than any original Celtic material 
(私訳:べーオウルフは「闇と薄明に満ち、悲しみと後悔に覆われているからこそ、大本のケルトのものよりもより『ケルト風』である)

そして、Fimi氏は、トールキンの言うケルトの「とらえがたい美(Elusive beauty)について

and it is here, I think, quite clear that he refers exactly to the romantic idea of ―Celticness, with its supposedly sorrowful tone and twilight setting,
(私訳:ここでトールキンが言わんとしていることは、ロマンティックなケルト的観念、すなわち 悲嘆に満ちた、薄明の中にあるとされているものでしょう)

と説明しています。

具体的には、

ラッカムのアーサー王の挿絵

みたいな感じでしょうか? フィミ氏は他にも、バーン・ジョーンズ、ウィリアム・モリスの名前を挙げていました。つまり、19世紀のラファエロ前派的な雰囲気を思い描けば大体合っていそうです。要はアレンジされたケルト風ということのようです。

では、トールキンの嫌いなケルトを見つけてみましょう。
それは、「純粋な古代ケルトの書物にひんぱんに見いだされるもの」で、「(ロマンティックなケルトから)取り除かれた粗野なもの」で、
「鮮明でありながら、割れた色硝子のように無秩序であるように思えるもの」です。

フィミ氏によると、bright coler(鮮明)は、例えではなく、ケルト神話によく出てくる原色のことを指しているとのことです。また、トールキンはよくケルトを「魔法の袋」と例え、なにか放り込むと、どんなものでも出てくる、と批判しています。おそらくは、その無節操さを嫌ったのではないかと。

もっともその好き嫌いの傾向は年を経るにしたがって、ケルトにより好意的な方に傾いていったようですが。

そして、もともと好きだったウェールズ語がもっと好きに(o^―^o)ニコ


最後に、ウェールズ語とアイルランド語について少し。

ケルト系の言葉は数多くあります。トールキンが最も愛したのはウェールズ語であることは確かでしょう。しかしあまり好きでない言葉もあるのです。
それは……


アイリッシュ

ですΣ(゚д゚lll)ガーン。ゲール語といった方が分かりやすいかもしれませんが。

1955年10月の講義より
I go frequently to Ireland (Eire: Southern Ireland) being fond of it and of (most of) its people; but the Irish language I find wholly unattractive.”(私はしばしばアイルランドに行くが、その地や人々は大体好きなのだが、アイルランドの言葉にはまったく魅力を感じない)

1967年8月の手紙には
I have no liking at all for Gaelic from Old Irish downwards, as a language,(私は言語的に、古アイルランドを祖とするゲール語は好まない)

(っω・`。)


まとめましょう。

1937年の手紙のケルト嫌い発言は
1.そもそも「シルマリルリオン」はアングロサクソンのための神話だった。
2.ロマンティックにアレンジされたケルトは好きだけど、原色きらきらで矛盾だらけの古代ケルトは好みじゃない。
3.おなじケルト系の言葉でもウェールズは好き。アイリッシュは……どうもダメ。


てな感じでしょうか。まったくややこしい人ですね!!


・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

長々と書いてしまいましたが、
ここまでお付き合いありがとうございます! これでも短くしたのです!!

もっとこのモリアの奥を掘り進みたいかたは下記をご参照くださいませ。フフフ……。




Fim氏のインタビュー

トールキンとアイルランド






字ばっかりで寂しいので最後に私の好きなバーン=ジョーンズ(教授も好きだと思う……)↓
私の好きなバーン=ジョーンズ(教授も好きだと思う)


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1937年12月16日の手紙より……:トールキンはケルトがお嫌い(@_@)??

今回はさやうぇんさん主催の
トールキンが好きな人のためのアドベントカレンダー
に参加しています(*´▽`*)

未邦訳の書簡集の中から、本日の手紙を紹介いたしましょう。、
さて、88年前の今日、トールキン氏は一体どんな手紙をしたためていたのでしょう……(o^―^o)ニコ

・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

1937年、日付は12月16日書簡集No.19。宛先は、ホビット出版元の社長、スタンレー・アンウィン氏です。ホビットがめでたく刊行され、売り上げも好調で、アンウィン氏はトールキンの次作を強く望んでいました。この手紙の数か月前、トールキンはすでに書き上げていた初期版シルマリルリオンをアンウィン氏に送っています。その原稿をアンウィン氏は数名の読者に試読させ、彼らから得た批評および感想をトールキンに渡していました。さて、その反応や如何に……。
以下に本文を要約いたします。多少砕いた感じになっておりますが、お許しの程をペコリ(o_ _)o))


体調不良および、諸事情により、筆不精をお許しいただきたく。
お送りしたシルマリルリオンが拒絶の憂き目を免れたようで、いたく安堵しております。
いつの日かこのシルマリルリオンを世に出したいと強く願うようになりました。

しかし、しかしあの「名前」については貴社の読者を大変驚かせてしまったようで……
……でも、あれはあれでよいのです。二つの言語(自作言語)から成り立っているのですから。
でも……

あれはケルト風(Celtic)ではないのです! 物語も言語も間違ってもケルト風では……!!。

ケルト風に関しては幾許かの知識はありますが、私自身どうにも不合理に感じてしまい楽めないのです(はっきり言って嫌い)
ケルトは鮮明でありながら、割れた色硝子のように無秩序であるように思えます。つまり、読者の言うがごとく「狂って」いるのです。でも私は狂ってはいませんから。

ともかくあの文体が目的にかなったものであることが分かって、私は実に励まされました

私が送った作品は貴社の期待に沿うものではないと分かってはいたのですが、少なくとも、個人的な価値以外があるかどうか知りたかったのです。もちろん、「ホビット」の続編なるものが求められていることは承知しております。けれども、私の心はこの創作神話と二つの創作言語でほぼ一杯であることを分かっていただきたいのです。
ホビットの続編はごにょごにょ(意訳です
善処いたします(意訳です)。
コメディ的なものは、もっと子供向けにしないと野暮ったくなりそうだ。
しかしオークや竜の本領発揮は、まだまだこれからです。
ご期待あれ!

(以降全文意訳です

送ったイラスト返してくださいね……講義で使う予定なんです。
あと、ホビット何冊か著作者用のお値段で分けてくださいませんか? クリスマスプレゼント用に……。
ではよい航海を! 私はラジオに出る予定です! よろしく!

J.R.R.Tolkien



と、本文はここまでです。
終わり

よいクリスマスを!!

では終わりません(*´Д`*) ごめんよ〰

少し内容に踏み込んでいきましょう ズカズカ


ホビットの次作を期待したアンウィン社に送ったのは、現在『シルマリルの物語』として出版されている物語の初期草稿(シルマリルリオン)だったのです。そして、読者の反応はといえば、当然かなり戸惑った様子で、ある読者は「ケルト風であり、アングロサクソン人は困惑するだろう」といったものでした。

それで、トールキンは
Not Celtic!
と猛反発しているのです。

しかし、これは、トールキンの創作言語に興味をお持ちの方、PJ映画で音楽に興味を持たれた方はきっとびっくりされたのではないでしょうか。
→あれはケルト風(Celtic)ではないのです! 物語も言語も間違ってもケルト風では……!!。
(え、指輪物語ってケルト風じゃないの???)
→ケルト風にしては幾許かの知識はありますが、私自身どうにも不合理に感じてしまい楽めないのです(はっきり言って嫌い)
となるともう(え。どーゆーこと?! 嫌いって??? )

って疑問符いっぱいつけたくなるのでは……。

訳文が怪しいかもしれないので原文引用しますね。

*

(原文)
Needless to say they are not Celtic! Neither are the tales.
I do know Celtic things (many in their original language Irish and Welsh). and feel for them a certain distaste:largely for their fandamental unreason. They have bright color, but are like broken stained glass window reassembled without design. They are in fact 'mad' as your reader says--but I don't believe I am.

(拙訳)
あれはケルト風(Celtic)ではないのです! 物語も言語も間違ってもケルト風では……!!。

ケルト風にしては幾許かの知識はありますが、私自身どうにも不合理に感じてしまい楽めないのです(はっきり言って嫌い)
ケルトは鮮明でありながら、割れた色硝子のように無秩序であるように思えます。つまり、そなたの読者の言うがごとく「狂って」いるのです。でも私は狂ってはませんから。

*

このケルトに対する嫌悪を表明した一文をちょっと読み込んでいきましょう。

映画では、エンヤ等のケルト系フォルクロールの歌手が起用され、騎馬文化のローハンを描くにあたり、ケルト文様があしらわれていました。
また教授の創作言語でも、ケルト系の言語の影響は明らかです。
トールキン研究でもみなさまご存じの辺見葉子氏の論文から少し引用してみましょう。

「より具体的に言うならば、ウェールズ語(ケルト系言語)の音韻体系をモデルにトールキンが創造したシンダリンというエルフ語から作られているという意味である。」

とあります。

こうなると、言語学者たるトールキンが、創作言語シンダリンと密接に関連する「シルマリルリオン」で、作風がCelticであることを強く否定するのは実に理解しがたいのです。

単なる気まぐれか? あるいは、トールキンのケルト観があるとき180度変遷したのか?

これはローハン文化と、創作言語(エルフ語)からの観点だけでは切り崩せない壁のようです。


長くなりそうなので一旦分けましょう。

次回、この壁をベガーしていきます。キーワードは「神話、イングランド」です。

よろしくお願いします(o*。_。)oペコッ










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Against a Dwarf 7 続き


ブログしばらく書いてなかった。一日終わって、オンライン主婦のおしごとが終わらない。
終わってそんで寝てしまう。寝てしまう。


たぱたぱたぱたぱたぱ


たぱたぱた



まあいいわ。続きいこう。


前回の睡眠障害(金縛り)についてまとめると。

1.睡眠サイクルは、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが乱れて睡眠障害となる。

2.レム睡眠をオフにする細胞が、リアルな夢を見るというところに関わっている。

3.加えて、小脳扁桃が恐怖感に関わっている。

ぐらいか……。


しかし窒息感、圧迫感の説明が欠けていたのだった。

これには、小脳扁桃で生じた、「闘争―逃走反応」によって、threat-activated-vigilance-system(適切な訳語が探せませんが、訳し下すなら「脅威にさらされている感覚が呼び覚ます警戒系統」か?)が呼び覚まされ、(リアルではないが)迫りくる危険をよりよく感知するために、些細な周囲の刺激を拾うようになるらしい。そして高次の脳がその些細な刺激を肉体に及ぶ脅威と捉えてしまった結果、

「首を絞められている、胸を押し潰されている、性的な暴力を受けている」

感覚が生み出されるという。


これが金縛りちゃんである。

現代において、ここまで解明されてるんだから、当然、治療法もある。マシューさんの論文は親切ですね。いろいろ言及なさっている。

でもここでは割愛いたします。本題から逸れ過ぎる。周回カーブ、コースから逸れた! おーっと壁に激突! 大丈夫か? 大丈夫か? いや、ホンダF1復帰おめでとう。


ともかく「金縛り辛い! この苦しみから逃れたい!」と悩んでいらっしゃる方は、


ぐぐってね……(遠い目)。

まあ、もんのそい簡単に言うと、睡眠障害には現在、様々な治療法があり、その一つとして、患者に「自己暗示を掛けさせる」療法があるということだ。

そして本来のテーマである、「Against a Dwarf」

このお呪いがそうした金縛りを封じるものだとすれば、

昔のアングロサクソンのシャーマンは、この現代の療法を先取りしたような形で、睡眠障害を治療していたことになるのだよ、

というのがマシューさんの主張です。


そんで本体(Against a Dwarf)の内容が分析されている。何故か短いんだけどさ。

本体は前文とお呪いの二つに分かれているので前文からいきませう。


Charm Against a Dwarf

Take seven little wafers, such as those used in worship, and write these names on each wafer:

Maximianus, Malchus, Iohannes, Martimianus, Dionisius, Constantinus, Serafion. Then sing the charm that

is given, first in the left ear, then in the right ear, then over the top of the head. And then let a

virgin go to him and hang it on his neck. And do this for three days. He will soon be better.

拙訳

「ドワーフ封じのお呪い」

礼拝に使うような小さな聖餅を七枚用意しなさい。その聖餅にはそれぞれ下記の名前を書きなさい

Maximianus, Malchus, Iohannes, Martimianus, Dionisius, Constantinus, Serafion.
これから言うお呪いを唱えなさい。最初は左の耳に、それから右の耳に、そして頭の上から。
そして処女を彼の元につかわし、それを彼の首にかけなさい。これを七日行えば、彼はすぐによくなるだろう。


ここに出てくる七人の名前は眠りにまつわる聖人伝説に出てくるものだ。というのは前に説明した。

VirginはVirgin Maryだろう。そして聖餅が出てくる事から、これはキリスト教的な要素が強いことがわかる。

しかし、ドワーフ自体は北欧ゲルマンの神話体系に属するので、この前文は、古いゲルマン的呪術のお呪いに対して、キリスト教的な蔽いを掛けるために付けられたものだろうと推測できる。



前文はこんくらい。そしてお呪い、

は、次回にする。


長くなるし~。そっちの方がメインだし~。


ではではにょろ~ん。






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まだ続いている。終わらない。 Against a Dwarf 6




雨が降っている。しとしとと、これはまさしく五月雨だ。


雨を蝿にすると五月蠅。単に家人のいびきがうるさいんである。


さて、前回、“nightmare”は、「睡眠者の上に乗って悪さをする想像上の生き物である」ということ(暫定的)、というところまで進んだ。ようやく。

これは具体的にゆーとあれですね。金縛りですね。ご経験がおありでしょうか? 

私も経験者ですが、それはそれは苦しいものです。

体が動かない、上に乗っかられている圧迫感。このまま死んでしまうのかしらんと思ってしまう恐怖感。

なにかしらの霊的体験か何かだと思っていました。半分だけ。

後の半分は、そんなことはあるめえという常識です。

マシューさんの論文が、私の長年のバファリン的疑問を解決してくれるだなんて、思いもしませんでした。

結果ぜんぶ常識になってしまって本来の薬効成分がなくなった気がするが、気にしない。


本題に入りましょう。金縛りという現象は、現代の脳神経学をもってすれば、ある程度解明できるものらしい。ある程度というのが味噌である。

一口に金縛りというが、医学的なる命名では睡眠麻痺(sleep paralysis)。半覚醒時に胸が締め付けられたり、誰かが上に乗られると感じるのが主な症状である。

この症状には、睡眠サイクルが多いに関与している。いわゆるレム、ノンレムのサイクルである。レムサイクルは、脳幹にある、レム状態をオフにする機能を持つ細胞によって生じるが、この機能によって、大脳皮質にある筋肉を動かす出力部と、感覚を受ける入力部が抑制される。その結果、皮質内の活動を活性化する。

だが、何らかの要因によりこのサイクルが崩れた場合、レム状態をオフにする細胞が、大脳皮質を刺激し(その要因はよく分っていない)、全く現実に思えるような幻覚(悪夢)が生じる。そして幻覚には、ある種の重要な意味合いを持った現実感が与えられる。幻覚の中身(悪夢)は個人的な差はあるものの、大体、似通っていたりするので、大脳皮質の同じ部分が影響を受けていると考えられる。

また、幻覚と同時に圧迫感、恐怖感を伴い、侵入者(睡眠者が自分の上に乗っていると感じる“何者”か)の存在も共通している。

こうした恐怖感を伴うため、睡眠麻痺の原因には、大脳辺縁系にある、半分退化した 旧哺乳類脳(paleomammalian)にあるという説がある。この領域には、小脳扁桃が含まれ、小脳扁桃は闘争‐逃走反応に関与しているといわれている。

睡眠麻痺にある間、この小脳扁桃が刺激されて、より高次の脳に、恐怖感を伝えるという仕組みになっているという。


長すぎる。

おまけに分らない。


もっとボキャ貧のコンビニのお姉さんが言うみたいに言って下さい。


「あの、すみません。レム睡眠と、ノンレム睡眠は……。えーと。繰り返されるんです。そう繰り返して目が覚めるんです。そしてそれが崩れると……

お弁当温めますか?

睡眠障害っていうらしいです。眠れないっていうより、あ、わたしはよく寝てます。眠りが乱される? ヘンな夢見たりとか……、それで、レム睡眠をオフにする細胞があって、それが、大脳皮質を刺激するんです。

お弁当温めますか?


大脳皮質って、こう……、ものすごく発達した皮みたいです。だから、刺激されると……悪夢が見れるらしいです。悪夢ですね。そうです。ものすごくリアルな悪夢。今見たくないです。

お弁当温めますか?


それと大脳辺縁系には、ショーノ―ヘント―っていう。小脳扁桃って、漢字。よくわからないです。もう半分無いような感じらしいです。それが刺激されると、とうそう―とうそう反応が引き起こされて。あ、すみません。
漢字にしないと分りませんね。お箸付けますか? 

あ、わたしの説明で分りますか? 余計分らないですね……。

すみません。とにかく、その反応が高次の脳に伝達されて、夢なんだけど、本当に怖く感じるみたいです。

お弁当温めますか?」





お姉さんのひざの間で温めて下さい。

















category: トールキン関連

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