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ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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「Tolkien and the Invention of Myth: A Reader」論文その1

Marjorie J. Burns

Norse and Christian Gods:(北欧の神とキリスト教の神)


トールキンが北欧神話の世界に影響を受けていることは第3週にも出てきました。
アイスランドの神話であるエッダ、特にスノッリ・ストルトンが編纂した「散文エッダ」はしばしば書簡にも登場し、トールキンが好んでいたことが分ります。
アイスランド神話には多くの神々が登場します。そうした神々は一神教であるキリスト教からすれば異教の神々であり、信仰することは好ましくありません。
そこでクリスチャンであるスノッリはエッダを読む読者に「北欧神話を尊敬を持って読んで欲しいが、信仰はしないでほしい」と忠告しています。
そして、北欧神話の信仰に対して距離を置くために、「ギュルヴィたぶらかし」という枠組みを導入しています。つまり、ギュルヴィが三人の神から世界の創造やその他の神話を聞くといった枠組みの中で神話を伝えているのです。

トールキンは同じ形の枠組みを初期の「Lost Tales」の中で使用しています。
つまり船乗りのエリオルがトル・エレッセアにたどり着き、エルフ達から古代の神話を聞くという枠組みです。
エリオルがエルフ達から聞く物語は「シルマリルの物語」のアイヌリンダレや、クウェンタ・シルマリルリオンの原型と言えるものです。
これらの物語にはイルーヴァタールによる世界の創造、ヴァラールのアルダ降臨などが含まれるのですが、このヴァラールが北欧神話の神々と非常に良く似た性格を持っています。

北欧神話の神々は、いわゆる荒ぶる原初の神々であり、暴力的で背徳的ですらあり、キリスト教の教義とまったく相反する性質を持っています。こうした特徴はトールキンのヴァラールにも幾分か窺うことができます。Lost Talesの頃のヴァラとヴァリエアは夫婦であり、子供をもうけたりします。またニエンナは「死者の館(House of Dead)」を司る死の女神Fuiという名を持ち、北欧神話のヘルと良く似た性格を有していました。

しかし、こうした初期の特徴は年月を経て「Lost Tales」にさまざまな改変がなされるうちに、ゆっくりと変化していきます。初期の執筆においてヴァラールはしばしばGodと表されているのですが、後期になるとGが大文字ではなく小文字で表されるようになります(*)。さらには、「Holy Ones」と書かれることが多くなりました。「フィオンウェ」はマンウェ夫妻の息子ではなく、マイアの「エオンウェ」となります。そうした変化に伴って、メルコールはより明確に悪の要素を一身に負うようになります。こうしてキリスト教的な善悪が二分された世界が神話の中でも構築され、古代の異教的な世界がキリスト教の世界観の中に組み込まれるようになったのです。



*Godとgodがどう違うのか
例えば、
the Almighty God 全能の神.
the Lord God 主なる神.
God the Father, the Son and the Holy Ghost 父(なる神)と子(なるキリスト)と聖霊, 三位一体.

ですが、
godは、
the gods of Greece and Rome ギリシャ・ローマの神々.
the god of the underworld 冥界(めいかい)の神.
という感じで、Gが小文字になるとなんとなく存在が小さくなるんですね。

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エッセイについて


4月1日エイプリルフール
突然Fimi先生からメールが来ていました。何だろう??と思ってあけると
「あなたはまだエッセイのテーマを私に提出していません。テーマの提出の締め切りは過ぎていますが、もしエッセイを提出するつもりなら、早くテーマを(メールで)提出してください」
とのことでした。
そういえば、どっかでテーマの提出うんたらかんたらを読んだ気がします。すっかり忘れてました。テーマは大体決まっていたので急いでメールします。
(もしこのコースを受講なさる方がいらっしゃったら、どうぞこんなポカはやらかさない(やらないでしょう普通)で下さいね)
エッセイがどのようなものか、またそのエッセイの形式についてはThaunさんのサイトに詳しいです。

ところで私のテーマは「Lost Talesに出てくるエリオルの物語とアングロサクソン年代記、ブリテン王列伝の関連性を探る」といった、大変マイナーなものです。Fimi先生から評価が返ってきたらもう少し説明しようと思います。

このテーマに対して、Fimi先生から頂いた参考文献のリストは
Tolkien and the Invention of Myth: A Reader, edited by Jane Chance.

Tolkien's Legendarium: Essays on The History of Middle-earth
でした。
米アマゾンで急いで注文しますが、普通のオーダーだとエッセイの締め切り後に到着してしまいます。それで、涙を飲んでお急ぎ便を使いました。本体以上の出費です。アホー。
めでたく「Tolkien and the Invention of Myth」は4日後に、Tolkien's Legendarium: Essays on The History of Middle-earthも1週間後には着きました。

本の中でエッセイの参考になるだろうとFimi先生が挙げられた論文はどちらも一つづつなので、ひとまず、その二つの論文に眼を通し、ざっと書き上げます。文法、言い回し等、変なところはネイティブが読めば山ほどあるに違いないとは思ったのですが、そんなのもうしょうがない、眼をぎゅっと瞑って提出しました。

しかし、せっかく高いお金を払って買ったんだから(ケチです)積読にしとくのも勿体ないと、いま上記の2冊の他の論文を読み進めています。
「Tolkien and the Invention of Myth: A Reader」
は読了しました。たくさん論文(エッセイ)があるのですが、中でも私が面白いと思ったものを明日から少しばかり紹介しようと思います。

category: トールキンオンライン講座 エッセイ

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4 指輪物語のドラマ化 関連資料



トールキンの作品はラジオや映画など様々なメディアでドラマ化されています。最初に作られた指輪物語のラジオドラマは1955-56年に製作されたものですが、トールキンはあまり気に入らなかったみたいですね。

ラジオドラマ以外にも、トールキンの生前にアメリカの映画製作会社からアプローチがありました。ストーリーライン(プロット)がトールキンに送られたのですが、これはトールキンにとってまったく意に添うものではなかったようです。このストーリーラインに対する文句は、映画製作会社の代理人であるForrest J. Ackermanに宛てた手紙の中に山ほど書かれています。
1978年に製作されたバクシ版のアニメもあります。当時のファンの受けは良かったようですが、話が中途半端で終わっているのが残念なところです。私も見たことがありますが、現代の日本的なアニメとはまったく違うところが以外と良かったりしました。

関連資料
*指輪物語のラジオドラマを紹介するサイト
BBCラジオによる第二作目。トールキンが気に入るといいですね。

*Universitiy of Aberystwythが始めたLOTRのリサーチプロジェクトを紹介するサイト
ウェールズにある大学の主催によるもので、PJのLOTRを見た人を対象にアンケートを行い、その傾向を分析するプロジェクト。

*シッピー氏によるPJのLOTRに関する記事
これを読む限り、シッピー氏はPJの映画に対して好意的な感じですね。
最後の一文を引用すると、“Peter Jackson has inevitably built up the action scenes and straightened the tangled threads, but the message survives the change of medium.”
「ピータージャクソンはアクションシーンを構築し、(物語の)もつれた糸をときほぐした。さらには、メディアの違いにかかわらず(トールキン)のメッセージが残されている」

一方Drout氏はあるインタビューで、PJ映画に対しアラゴルンやデネソールの描き方があまりにもハリウッド的であるという感想を述べています。

簡単な一般論で申し訳ないですが、「人それぞれ」といったところでしょうか。私はPJのLOTR大好きです。

このようにして10週も終わってしまいました。早いものですね。けれども読み残した資料が大量にあるので、ちっとも終わった気分ではありません。
ここでは、エッセイについて来週あたりに少し書こうと思っています。よろしかったらまたお越し下さい!

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3 トールキンとスカラーシップ 関連資料



スカラーシップとは、奨学金ではなくて研究のことみたいですね。最初何のことかと思いましたよ。
さて、トールキン研究は「ホビット」が刊行されて以来70年の歴史があります。

Drout氏とHilary Wynne氏は今までに行われたトールキン研究を文献目録にまとめました。下記のサイトにそのリストが掲載されています。http://fileserver.wheatonma.edu/mdrout/TolkienBiblio/index.html

関連資料
*Drout氏とHilary Wynne氏による「Author of the Century」に対するレビュー
シッピー氏の「Author of the Century」に対する Drout氏と Wynne氏によるレビューです。
しかしこれ、PDFで60ページ以上あります。レビューでこの長さなんですか?まだ全部読んでいません。

ところで、Drout氏とWynne氏はトールキン研究を次の4つの分野に分けることを提唱しています。
source studies(原典をさぐるもの)
good and evil in Tolkien(トールキンの善と悪)
mythology for England(イングランドのための神話)
the defence of Tolkien(トールキン擁護)
この分類から漏れる研究もあるのですが、その数は少ないものと見なされています。

*トールキン研究に関するDrout氏と読者のQ&A
The Chronicle of Higher Educationという、大学の教授や管理者のための情報サイトの中にある記事です。
トールキンを研究する際に生じる問題や悩み事に関して、Drout氏が答えています。
いろいろな質問があって面白いです。トールキンの指輪と核兵器の関連性とか、トールキンの人気によって言語学を志望する人が増えるかどうかとか。

中にはトールキンの作品はシェークスピアに匹敵すると考え、シェークスピアと同じような扱いで文学部で教えるべきではないか?と質問される方もありました。
Drout氏は、現在の英文学部でそれを行うには「Politically problematic」と答えています。政治的にというか、学内派閥的な問題があるみたいな感じだと思います。そして、現時点ではシェークスピアやミルトンといった古典とは別個にトールキンを扱うほうが良いと考えているようです。

category: トールキンオンライン講座 第十週

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2 トールキンとCanon 関連資料


Canonの意味を辞書で拾うと「真正と認められた書物」という意味があります。日本語の純文学に近い意味合いかもしれませんが、純文学にはファンタジーは含まれませんね。ともあれ、今回のテーマはトールキンの作品には文学的な価値があるかどうか?です。

関連資料
*初期の「指輪物語」に対する書評
指輪物語が出版された時の書評には、その奥深さを讃えるものも多かったのですが、反面「子供向けのファンタジー」として軽く見られる傾向もありました。
その後もトールキンの作品は満場一致で「研究に値する文学作品」と絶賛されることはないようです。その一因として、指輪物語がポップカルチャーの一部として受け取られていることもあるようです。

*デイリーテレグラフに掲載されたシッピー氏の記事
題名は「批評家が指輪物語を古典として見なすべき理由」です。

この記事を要約すると、指輪物語は小説であり、妖精物語であり、ロマンスでもある。そうした幅の広さによって指輪物語を一つのジャンルに固定することは難しい。それが指輪物語をないがしろに扱う理由の一つとなっている。しかし指輪物語は小さいジャンルの中に納まらない作品としてとらえるべきだ。指輪物語が持つ魅力は英国国民にのみならず、全世界の人々を引き付ける。それは彼の作品が普遍的なものであり、その神話は時間を超越するものだからだ。
という感じでしょうか?

シッピー氏は、「指輪物語」を文学的なcanonとすべきであるとして、以下の2点を主張しています。
一つには非常に人気があること。人気があることが文学的に優れているという理由にはならないが、文学の価値を測る場合、大衆の支持も考慮すべき。
もう一つはトールキンによってファンタジーというジャンルが確立されたこと。
だからこそ批評家は「指輪物語」や「ホビット」を文学の古典として見なすべきだ、としています。

トールキンファンにとっては心強い事この上ない、素晴らしい主張ですよね。

category: トールキンオンライン講座 第十週

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第十週 1 関連資料

1 トールキンの作品とその後
トールキンの作品は数々のアーティストに影響を与え、そのモチーフとなっています。今回はそうした派生作品に焦点があてられています。

関連資料
*ビードルズが製作を計画していた指輪物語の映画の紹介
ここです↓
http://archives.cnn.com/2002/SHOWBIZ/Movies/03/28/rings.beatles/
なんと、ポール・マッカートニーがフロド、リンゴ・スターがサム、ジョン・レノンがゴラムでジョージ・ハリスンがガンダルフを演じる予定だったようです。
ビートルズの映画はどれも面白いので、どんなものか見てみたいかも(おそるおそる)。ただし、原作に忠実な作品は多分期待できなかったでしょうね。

*トールキンの作品にインスピレーションを受けた音楽をリストしたサイト
ここです↓
http://www.tolkien-music.com/
結構HM系が多い気がします。ブラガは有名ですよね。日本にもファンは多いことだと思います。あと、ツェッペリンのロバートプラントも大変有名。

*アラン・リー、ジョン・ハウ、テッド・ネイスミスのサイト
紹介するまでもない有名なご三方。どの方の絵も素晴らしいですよね。

*Ethan Gilsdorfによる「トールキンとコマーシャリズム」に関する記事
PJの映画化によって、トールキンの指輪物語は一時期「金のなる指輪物語」となっていました。振り返ると感慨深いものがあります。巷にはグッズやフィギュアが溢れ返り、関連本が沢山出版されたことが思い出されます。
そうしたコマーシャリズムにまつわるエピソードが書かれています。中でもある意味ゴシップとして興味深かったのが、クリストファーが主導する「トールキン財団(Tolkien Estate)」にまつわるトールキン家の苦悩でした。
トールキンは指輪物語とホビットの版権を出版社に渡し、自身はライセンス料をもらうといった形をとっていました。当時は今のように著作権といった概念が希薄だったのです。詳しくはよく分らないのですが、どれほどに沢山売れたとしても、本の売り上げによる収益が残された家族にまで分配されることはない仕組みのようです。しかも副次的権利(subsidiary rights:著作物の内容を映画、電子出版物等で公表する権利 )まで売ってしまっているようです。
そうした苦い経験によって、クリストファーは残された遺稿に関し、閲覧者を選別し限定するといった非常に閉鎖的な姿勢を取るようになりました。また、トールキン財団はトールキンの名の使用権、また再版権に関して法律が適応できる限り厳しい制限を設けています。
ですが、トールキンの孫でありクリストファーの息子であるサイモンはこの姿勢に反対しました。そうして父親の反感を買ってしまったため、彼は4年と半年父と口をきいていないそうです。この記事は2003年のものです。まだ冷戦状態が続いているのでしょうか?

「ホビット」の映画化難航には、こうしたトールキン財団の硬化した態度も一因として挙げられるのかもしれませんね。

category: トールキンオンライン講座 第十週

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第十週 トールキンと現在、トールキンの作品の文学的な位置づけ

第10週 です。

トールキンと現在、トールキンの作品の文学的な位置づけについてです。

1 トールキンの作品とその後
関連資料
*ビードルズが製作を計画していた指輪物語の映画の紹介
*トールキンの作品にインスピレーションを受けた音楽をリストしたサイト
*アラン・リー、ジョン・ハウ、テッド・ネイスミスのサイト
*Ethan Gilsdorfによる「トールキンとコマーシャリズム」に関する記事

2 トールキンとCanon
関連資料
*初期の「指輪物語」に対する書評
*デイリーテレグラフに掲載されたシッピー氏の記事

3 トールキンとスカラーシップ
*Drout氏とHilary Wynne氏による「Author of the Century」へのレビュー
*Tolkien Scholarshipに関するDrout氏と読者のQ&A

4 指輪物語のドラマ化
*指輪物語のラジオドラマを紹介するサイト
*Universitiy of Aberystwythが始めたLOTRのリサーチプロジェクトを紹介するサイト
*シッピー氏によるPJのLOTRに関する記事

最後の週は内容が盛りだくさんです。今までの神話や古典を中心に据えた話題からずっと若返った(^^)ものになっています。ですが関連資料には…やはりFimi先生のこと、シッピー氏やDrout氏の記事が多く手強いものになっていました。  …全部読めてないのですよ。

category: トールキンオンライン講座 第十週

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4 結論


特に関連資料はありません。Fimi先生の講義内容も短いものです。
簡単にまとめると、「中つ国」が紀元前よりずっと古い時代のヨーロッパであるという設定は、ローハンがアングロサクソン文化的であったり、シャイアがバーミンガム近郊の農村に似通っていたりすることと矛盾しています。しかし、トールキン自身もこのことには気づいていました。トールキンの主な関心は神話と言語にあり、「歴史的な小説」を書くことはまったく意図していなかったのです。トールキンの読者も考古学的な正確さを求めて読むことはないでしょう。むしろロマンスの中で展開される遠くはなれた過去に魅力を感じるのです。

ところで余談ですが、今週頭の月曜に10週目つまり最終週に入ってしまいました。あさっての日曜日、つまり20日には、オンライン講座のサイトに繋がるためのIDとパスワードがばっきり無効になってしまうそうです。私、まだ10週目の講義内容に全然目を通していないんですが…。エッセイ書くのがきついのだから、もう少し余裕をくれてもいいじゃないかと思いました。

category: トールキンオンライン講座 第九週

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3 シャイアの古風なマテリアルと文化 関連資料


ホビットの里であるシャイアには、やはりトールキンが幼い頃に過ごした頃、19世紀末のウォーリックシャーの風景や文化が盛り込まれています。
「ホビット」は、トールキンの神話の中核をなす物語ではなく、むしろ思いつきで書かれたものです。ですが、「ホビット」の成功によって「指輪物語」が生まれ、出版され、その背景となるトールキン神話へと読者を繋げたことが重要なのだとトールキンは手紙に書いています。トールキンはホビット庄のスケッチやドローイングをたくさん描きました。このなかに描かれた水車小屋に当時のイングランドの農村風景が強く感じられます。トールキンが幼い頃、母と弟と住んでいたセアホールには有名なセアホール・ミル(水車)がありました。

関連資料
*セアホール・ミル(Sarehole Mill)の紹介
けれどもこのセアホール・ミルは単なるのどかな農村風景の象徴ではなかったようです。このミルは16世紀の中ごろにとうもろこしを挽くために建てられました。しかし18世紀の中ごろに蒸気機関を使用した金属の圧延機に作り変えられたそうです。そして産業文化の発展の象徴となったのですが、その後に台頭してきた工場に較べて生産性が劣るものとなり、20世紀になるまでに、また元のとうもろこし挽きに戻されたそうです。1919年には操業を取りやめ、元通りに修復された建物は、今では博物館の一部となっています。

トールキンにとって、このミルは産業革命の象徴ではなく、むしろノスタルジーを掻き立てるモチーフとして理想化されていたようです。

category: トールキンオンライン講座 第九週

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2 中つ国のマテリアルと文化を探る 関連資料

トールキンは常に中つ国は北ヨーロッパであるとしていました。ただしそれは遥か昔の古代の、神話と伝説の霧の中に失われたヨーロッパです。三紀は(トールキンの時代から)6千年の昔に相当すると設定していたようです。聖書の解釈では紀元前4千年前に世界が創造されたとしているので、ちょうど三紀の始りとこの世界の始まりが一致します。また、ローハンはアングロサクソン文化、ゴンドールはビザンチンやローマあるいはエジプト文化に相当するようです。そしてヌメノールはその航海術から北欧のヴァイキングを彷彿とさせます。ヌメノールの船葬はヴァイキングの文化の特徴でもあります。だからヌメノールの子孫であるボロミアの遺体は船に乗せられるのですね。

トールキンの同僚であったゴードンは、スカンナビジアの国々のバイキング時代に関する歴史についての本を翻訳していました。おそらくトールキンはゴードンからそうした知識を得ていたことでしょう。

関連資料
*Oseberg Shipの紹介
こんなのです。↓
http://www.khm.uio.no/vikingskipshuset/osebergskipet_english.php
こんなのです。↓
*Gokstad Shipの紹介
http://www.khm.uio.no/vikingskipshuset/gokstadskipet_english.php
上記のヴァイキング時代の船はゴードンが研究していた資料の中にあったものです。また、トールキンはフォルノストをスウェーデンのウプサラの古墳に擬えたりもしています。
あとエジプトですが、トールキンは手紙の中で、アラゴルンが戴冠式に被る王冠をエジプト風のものだと解説しています。そして手紙にイラストまで描いているのです。
下記はエジプトの王冠の写真です。
http://www.egyptologyonline.com/pharaoh's_crowns.htm

ローハンはその言葉からしても古代のイングランド風、つまりアングロサクソン風なのですが、トールキンはアングロサクソンのマテリアルがそのままローハンのマテリアルなっているわけではないと主張しています。しかしその一方で、バイユー・タペストリに描写される鎖鎧がローハンのものに近いとも説明しています

*バイユータペストリの紹介
バイユータペストリはフランスで保存されていたものですが、英国で作られたものだいう見方が現在では強いようです(トールキンも英国のものだと見ています)。

category: トールキンオンライン講座 第九週

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1 トールキンと当時の考古学  関連資料

1 トールキンと当時の考古学
トールキン自身は考古学については「大雑把な知識(Sketchy Knowledge)」しか持っていないと認めていましたが、考古学との関わりを全く持っていなかったわけではないようです。

関連資料
*Lydney Parkの紹介
Lydney Park(日本語でなんと読むんでしょう?)は、グロスターシャーにあるローマ時代の遺構なのですが、トールキンはその古代遺跡の発掘を助けたそうです。ローマ軍が去った後に残された建築物は、後の地元民からドワーフや子鬼の住む場所として恐れられました。この発掘を手助けしている期間は「ホビット」を書いた期間に相当するため、トールキンはLyndney Parkから多いにインスピレーションを得たことが推測されます。

*ローマ浴場博物館の紹介
また、トールキンはCollingwoodとMyresによるローマ時代のブリテンとイングランド人の住居に関する本の中で、温泉の神であり、ケルトの神(ローマの神ではミネルヴァに当たる)である「スリス(Suils)」の名が言語学的(Philologically)に正しいものであることを確認したとのことです。

*「ブリティッシュ考古学(雑誌らしいです)」に掲載されたDavid Hiontonの「Lord of the Hrungs」の記事
トールキンが物語のインスピレーションを受けたと思われるイギリスの土地がいくつか上げられています。
まずトールキン自身が描いたシャイアの風景は、彼の弟の果樹園があった「イヴシャムの谷(Vale of Evesham)」の「ブリードンの丘(Bredon Hill)」に似ています。
また、トールキンは、ヘルム峡谷はサマーセット(Somerset)のチェダー(Cheddar)峡谷を元にしていると書いています。
そしてバークシャーダウンズ(Berkshire Downs)は1930年代、トールキンが子供達を連れてよく歩いた所で、塚山(Barrow-land)の原風景となった場所と思われます。バークシャーダウンズは考古学的に見ても非常に興味深い場所で、トールキンはそこから様々なインスピレーションを得たことが推測されます。

ではまた明日にでも続きを書きます。

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9週 トールキンと当時の考古学

第9週 です。

トールキンと考古学についてです。

1 トールキンと当時の考古学
関連資料
*Lydney Parkの紹介
*バースのローマ浴場博物館の紹介
*「ブリティッシュ考古学(雑誌らしいです)」に掲載されたDavid Hiontonの「Lord of the Hrungs」の記事


2 中つ国のマテリアルと文化を探る
関連資料
*Oseberg Shipの紹介
*Gokstad Shipの紹介
*バイユータペストリの紹介

3 シャイアの古風なマテリアルと文化
*Sarehole Millの紹介

4 結論

今回も比較的少なめ。昨日が課題であるエッセイの締切日だったのですが、なんとかぎりぎり提出できました。

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3 人種の混合、オークと人種問題



関連資料

Anderson Rearickの論文 「Why Is The Only Good Orc a Dead Orc?」
要約します。

現在でもトールキンの作品に人種差別が見られるか否かについての議論がある。しかし学会は長い間その件について無視していた。だが、「指輪物語」がピーター・ジャクソンによって映画化され、ポップカルチャーにまでなり、今までにない範囲の観衆の興味を引くこととなった。その結果、John YattやStephen Shapiroといった「トールキンは人種差別者だ」と主張する批評家が出てきた。
Yattは、敵側は常に黒い衣装をまとう事やウルクハイがドレッドヘアであるということを根拠にし、Shapiroは、白と黒といった色コードは人種差別を表わしていると主張した。しかしこうした色の表現はトールキンの原作に由来するのではなく、映画を製作したピータージャクソンによるものである。またShapiroは、ギムリがスコットランド訛りの英語を使うことを指摘し、トールキンはスコットランドに偏見を抱いているとするが、これはギムリを演じたジョン・リス・デイビスの演出である。しかしYattは原作に立ち戻った上でもやはり、指輪物語には色に関しての差別意識が見られるとし、Shapiroは同じ理由で指輪物語を人種差別的なものと見なしてる。

トールキンは南アフリカに生まれ、幼年時代一家は現地の人を使用人として雇っていた。トールキンの家族写真にはそうした使用人が一緒に写っているものがあり、偏見や迫害といった意識は薄かったと思われる。また、トールキンはユダヤ人迫害に対しても反対の立場を取り続けた。トールキンの白を高貴として黒をその反対におく傾向はむしろローマ・カトリックの宗教的な、つまり光に対する影といった概念から派生したものとするのが妥当だろう。

オークという種族はこの意味合いから考えて悪魔の下僕的な存在と考えた方が良い。つまり「Why Is The Only Good Orc a Dead Orc?(何故死んだオークだけが良いオークなのか?)」という問いは、「なぜ良い悪魔は清められた悪魔だけなのか?」という問いに置き換えることができる。その答えは「悪魔を良いものにすることにできるのは神だけ」である。トールキンは、「オークはメルコールによって創られたのではない。だから本質的な悪ではない。彼等は(少なくともエルフや人)によって救われることはないだろう。だが彼等は法の内にあるのだ」とし、エルの心のうちにはオークを救済する意志が存在する可能性があることを示唆している。

トールキンの人種問題はこうしたキリスト教義以上に重要視されるべきではないだろう。


しかしFimi先生は、書簡集などの言葉からやはりトールキンも人種による偏見を持っていたとしています。しかしそれは当時のヨーロッパに共通するもので、個人的感情から来るものではなく、トールキンが生きた時代の反映とされているようです。

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2 中つ国の人種 エルフと人



関連資料が特にないので講義内容をまとめます。

トールキンが描く種族の中で一番“高位”とされるのがエルフです。そしてエルフにも3つ種族があり、中でも高貴とされるのがヴァンヤールです。ヴァンヤールの特徴といえば白皙金髪です。また黒髪のノルドールの家系でも、ヴァンヤールの血統を持つフィナルフィン家(例えばガラドリエル)が美しいとされています。
そして今度は人です。人は常にエルフより下位とされます。また人の中でも一番高貴なのがエレンディルの血を引くヌメノールの王家です。人もまたすべて同等ではありません。東夷や南方人は明らかにmenとは異なる下位のWild menの範疇に入るものと思われます。

このようにトールキンの作品の中で種族は全て同等に扱われることはなく、それぞれの位置が付けられています。

そして人の中でも高貴とされるヌメノールの血は、より下位の人種と混じってだんだん腐敗していきます。こうした純粋な血ほど良い、血が混じるほど劣化してゆくという考え方は、トールキンだけのものではなくヴィクトリア時代に一般的だったもののようです。19世紀後半には、ゴールトン(ダーウィンの従兄弟らしいです)によって、才能を持った人の子孫は世代が下るごとに受け継がれる才能が薄まっていくという統計が出され、血統の濃さによる優位性が主張されました。

またトールキンは人をエルフと友好的な種族とそうでない種族に分け、東夷や南方人はサウロンに加担するものとしています。しかしどちらの範疇にも属さない種族もあります。ガン・ブリ・ガンがその代表でしょう。こうした原始的な人種をロマンチシズム的に解釈する見方は、18世紀にジャンジャック・ルソーによって確立された「高貴な野蛮人」の流れに属するようです。つまり、人は本来自然の、あるがまま状態が「良い」のであって、それが文明によってだんだん穢されていくといった考え方です。

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1 現代の人類学とトールキンの見方 関連資料


トールキンは作品中に多くの種族を作り出しました。エルフやホビットやエント、オークなどなど。これらの種族のほとんどが"擬人化”されたもので、こうした擬人化された種族に様々な性質が与えられているところがトールキンの作品の特色です。
トールキンは指輪物語の中で種族を表わすために、race、people、folk、kindred、kindといった様々な言葉を使っていますが、その使い方に統一はみられません。こうした事から、トールキンは種族(あるいは人種)といった概念に対して曖昧な態度をとっていることが窺えます。ですが、この曖昧な態度はむしろ当時の人類学の発達に伴って、トールキン自身の種族に対する見方が変容していった事を表わしてるのではないか?との事です。

関連資料
*オックスフォードのオンライン辞書による“人種主義人類学(Racial Anthropology)”の定義
19世紀までは、raceという言葉はpeopleとほぼ同じ意味合いだった。そしてイギリスをフランス、あるいはドイツと区別して使うような場合に使用されていた。だが、19世紀になるとraceには生物学的な意味が含まれるようになり、人類学的、また歴史的な要素の比重が大きくなっていった。そして社会の進化の過程に基いた階層的な違いを示す言葉になっていった。今日では、生物学的な違いによってraceを分けることは間違いに繋がるという見方が一般的である…。

非常に難しいです。wikiの人種差別の項目が参考になるかもしれません。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E7%A8%AE%E5%B7%AE%E5%88%A5

*オックスフォードのオンライン辞書による“社会ダーウィン主義(Social Darwinism)”の定義
19世紀後半の社会理論の軸となるもので、自然淘汰の理論を進化に結びつけ、人間社会を分析するもの。ダーウィン自身進化論を作り出したものの、こうした主義からは距離を置いていた。 優秀なものが生き残り、繁栄するという理論は、社会の不均衡を正当化する目的にしばしば使われた。またイギリスやアメリカの中だけでなく、中国や日本もこの理論を取り入れナショナリズムを推進させた。

19世紀の終り頃には、人種的に純粋であることが一つの国家の強さを維持するために不可欠であり、また白人の優位性が科学によって証明されたものという認識が一般的だったそうです。トールキンもこうした認識を一切持っていなかったとはいえないようです。
しかし、トールキンが「ホビット」を出版した後、2次大戦となり、そこでトールキンはナチに対して断固とした態度を取ります。ホビットのドイツ語翻訳の際に、自分がユダヤでない証明を求められた時にもきっぱりと断りました。また、トールキンは、差別意識の強いraceよりもpeopleを使うように意識するようになったようです。

残りはまた明日にでも書きます。

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第八週 中つ国と現代の人種主義人類学(Racial Anthropology)

第8週です。

講義内容は、
 
1 現代の人類学とトールキンの見方

関連資料
*オックスフォードのオンライン辞書による“人種主義人類学(Racial Anthropology)”の定義
*オックスフォードのオンライン辞書による“社会ダーウィン主義(Social Darwinism)”の定義

2 中つ国の人種 エルフと人

関連資料 特になし

3 人種の混合、オークと人種問題
Anderson Rearickの論文 「Why Is The Only Good Orc a Dead Orc?」

今回は先週よりもさらに少ないです。今月の14日にはエッセイを提出しなければならないので、この量の少なさは受講生への配慮かもしれません。 
私もアマゾンから本を取り寄せて進めています。エッセイについては講義が終わった後でまとめようと思います。

category: トールキンオンライン講座 第八週

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4 中つ国の文字 関連資料

今回は文字についてです。遊びの要素が入っていて楽しいです。

関連資料
*Ostadanによる「The Letters of Middle-earth」 
テングワールとキアスの書き方。
この資料ではテングワールとキアス文字の綴り方について解説しています。フォントを配布しているサイトも紹介されていて、とても実用的(?)です。面白かったのが、テングワールの綴り方。母音は子音の上のテフタールで表わされるのですが、それ以外にも母音を別の字で表わす「完全文字化」というのもあるのですね。

西門の銘がその「完全文字化」で書かれたものだそうです。指輪物語の追補篇にもこの「完全文字化」は少し書かれているのですが、読んでもよく理解できないままにしていた部分なので、今回理解できてよかったです。そしてテングワールは表音文字なので、わりとどんな言語でもローマ字表記のように表わせるらしいです。とは言え、子音がどう日本語の子音と対応しているかよくわからないので、実際どんな風にやればよいのかは分りません…。


あとはキアス文字。
ここではゲルマンのルーン文字とキアス文字の関連性について述べています。

*ルーン文字についての資料
これはゲルマンの様々なルーン文字を紹介するものでした。
日本語のサイトではこちらが詳しいと思います。
http://www.runsten.info/index.html(無断リンクすみません)

トールキンはキアス文字とルーン文字の関連について言及していないのですが、「ホビット」では基本的にアングロサクソンのルーン文字を使用しています。しかし「指輪物語」のキアス文字は、ルーン文字に似ているとはいえ、トールキンが創作したものです。この矛盾について、トールキンは「The resultant discrepancy must be answered by saying that both kinds were used in Middle-eaarth(結果として生じた食い違いに対する答えとしては、中つ国には2種類のキアス文字が使われていた、という事になる」
と説明しています。「ホビット」はトールキン神話とは別の話として書かれていたものだったので、その続編の指輪物語を神話と結びつける際、ルーン文字そのままを使うのはまずいと思ったのでしょうね。

ちなみにウィンドウズ用のトールキンのフォントがあるサイトが
http://www.acondia.com/fonts/index.html
で、マッキントッシュ用が
http://babel.uoregon.edu/yamada/fonts/tolkien.html
です。



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3 社会言語学と翻訳理論 まとめのようなもの


関連資料は特に無いので、Fimi先生の講義の内容をまとめます。

まずトールキンが創造した言語にはHighとLowがあること。
Highは特に、エルフ-ラテンとされるクエンヤです。Lowの方は特定にされていないのですが、オーク語等を指すのかも知れません。

また、中つ国にはいくつかの方言があります。ロリエンのシルヴァンエルフの使うエルフ語は、ロリエンの中で通用するものです。またピピンがベレゴンドに話す時は、共通語(Common Speach)にホビット訛りが入っています。こうしてホビット訛りが入ることによって、ゴンドールの言葉よりも雰囲気が軽く高貴さも薄まり、ホビットの社会的な位置をまさしく表すものになります。
またオーク達が喋る言葉ですが、サウロンが作り出した黒の言葉(Black Speech)を彼等は使いません。サウロンはオーク達に黒の言葉を教えられなかったのです。オークは黒の言葉を習い覚えることができず、結局様々な言語を混入した方言で喋ることになります。そうして混ざった言葉はさらにオーク達の中で発達し、オーク語となるのです。こうした説明は大体指輪物語の追補にありますね。

Fimi先生はこのオーク達の状況をバベルの塔(の崩壊後の言葉)になぞらえています。

次に翻訳の問題です。
トールキンはアルダの世界の言葉を、種族とその歴史に従って構築したのですが、一つ矛盾するところがありあります。
それは古英語とゴート語がローハンの言葉の中に混じっていることです。ロヒリムは元々、アングロサクソンの言語、文化がモデルとなっているのですが、アルダの他の種族の言葉は今のヨーロッパ大陸にはない言語であるのに対し、ロヒリムの言語には現実に使用された言語がみられるというのは何か変です。矛盾しています。

トールキンはこの矛盾を翻訳に帰するものとして解決しました。つまり、ロヒリムの言葉やそれに関連をもつホビットの言葉は、現代英語に翻訳されたものであり、英語に変化を持たせることによって種族や民族による用法の違いが表わされている、としています。

しかし、Robert Fosterは次のように指摘します。
オルサンク(Orthanc)には二つの意味がある。エルフ語としては“Mount Fang”で、ローハンの言語では “cunning mind”。しかし、古英語 ortancにも、"intelligence, understanding, mind; cleverness, skill; skillful work, mechanical art"という意味がある。ここにローハンの言語と古英語の混在が見られる。

結局、トールキンはこの翻訳という解決方法を物語を書いてしまった後で捻り出したみたいですね…。

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2 中つ国の言語と現代の言語学(Linguisitics)/(歴史的な)言語学(Philology) 関連資料


中つ国の言語と現代の言語学(Linguisitics)/(歴史的な)言語学(Philology) 

何の事かさっぱり分らない(@@)。
素直にオンラインの辞書を引くと、Linguisiticsは言語学で、Philologyは文献学となっていました。しかしここで言及されているPhilologyは文献学とは少し感じが違う気がします。それで暫定的にですが、「(歴史的)な言語学」とします。

トールキンは、Linguisticsの教授ではなくて、Philologyの教授だったのです。もっともトールキンの時代では、Philologyに歴史的な意味合いを含めることが一般的だったわけではなかったようです。しかし、19世紀にドイツでインド-ヨーロピアン言語の比較に基いた研究が盛んになり、歴史的な言語の研究が重要視されるようになったのです。それで、

関連資料
*言語学(Linguisitics)/(歴史的な)言語学(Philology)の違いについて初歩的な導入
が来るわけです。ここではオックスフォード大学における定義が紹介されています。

要約すると言語学(Linguisitics)は、

言語を全ての面から研究する学問。その構造、歴史、意味、使用法、などなど。また子供がどのようにして言語を習得するようになるかといった幅広い範囲を含む。

(歴史的な)言語学(Philology)は、
ブリティッシュイングリッシュでは、(歴史的な)言語学(Philology)は、しばしば言語の歴史の研究を意味する。(歴史的な)言語学者(Philologists)は、個々の言語の発達から、言語の発達の経緯などを研究する。また、比較言語学(Comparative philology) は、言語の分類、分類したグループの発達の歴史の再構築、それぞれのグループの母言語の特徴等を研究する。

トールキンは上記に上げた19世紀の流れを受けて、インド-ヨーロピアン言語の言葉の樹に非常によく似た自身の言葉の樹を作成しています。つまりトールキンは、一つの言語の創造だけではなく、時間の流れ、また種族の歴史と共に言語が枝分かれし、発展していく様子も丁寧に設定していたのです。

今回は、伊藤つくす(漢字が出てきません)の「エルフ語を読む」、と共通している部分が多いように思います。

また明日続きを書きます。ではでは。

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1 言語の創造   関連資料

1 言語の創造   関連資料

ここでは、トールキンの生涯の趣味であった、「言語の創造」に焦点を当てて講義を進めています。

まず、トールキンの言語に対する好みが述べられています。トールキンが好ましいと思った言語は、ギリシャ語、フィンランド語、ウェールズ語、そしてゴート語でした。 特にフィンランド語、ウェールズ語を美しいと感じていたようです。

*ウェールズ語の紹介
トールキンは1955年に「English and Welsh」という講義を行い、そこでウェールズ語の美しさを述べたとの事です。それで、ウェールズ語をあまり知らない人のために、ウェールズ語に関するサイトが紹介されているわけです。下記のサイトでウェールズ語が聞けます。
http://www.bbc.co.uk/cymru/live/yrwythnos.ram

*Helge Fauskangerによる短い論文
論文というより、これは議論に近いものですね、きっと。トールキンの言語を研究するサイト「Ardalambion(http://www.uib.no/People/hnohf/index.html)」の中にあるものです。
題名は「Tolkien's Not-So-Secret Vice」となっています。
訳してみると「トールキンのそれほどひそやかではない悪徳」となるでしょうか?
冒頭部を要約すると、トールキンの従姉妹はAnimalicという言葉遊びをしていた。トールキンもそれに興味を示し、一緒に Nevbosh という言葉を作って遊んだ。それらは基本的にナンセンスなものであり、ジョーク以外の何物でもなかった。しかし、トールキンはその後そういった言葉遊びを発展させ、自身の感じる「美」を基準にして言語を創造するようになっていった…。

という感じです。

*同じくHelge Fauskangerによる短い論文
トールキンは一体いくつの言語を創造したのか?について。

トールキンが創造した言語で完成しているものはまったくゼロだそうです。しかし、完成に近いものだと、「クエンヤ」と「シンダリン」の二つが上げられるようです。(上記のNevoshのようなアルダに関係のないものは除いて)
他にもヌメノールの言葉や、ヴァラールの言葉、ドワーフの言葉などを数に入れると、大体10から12の言語を創造したと考えられるようです。

凄まじい数ですね。
個人的な意見ですが、クエンヤとシンダリン以外では、“言葉を作った”というよりはそういう“言葉があることを設定した”に近いような気がします。

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第七週 トールキンの言語: Secret Vice

第7週 です。

トールキンとトールキンの創造した言語についてです。

1 言語の創造: ‘A Secret Vice(密かな悪徳とでも訳せばいいのでしょうか)’

関連資料
*ウェールズ語の紹介
*Helge Fauskangerによる短い論文
トールキンは自身の言語を創造する趣味について「A Secret Vice」と述べていた。その事を主題とするもの。
*同じくHelge Fauskangerによる短い論文
トールキンは一体いくつの言語を創造したのか?について。

2 中つ国の言語と現代の言語学(Linguisitics)/(歴史的な)言語学(Philology)

関連資料
*言語学(Linguisitics)/(歴史的な)言語学(Philology)の違いについて初歩的な導入

3 社会言語学と翻訳理論

関連資料 特になし

4 中つ国の文字

関連資料
*Ostadanによる「The Letters of Middle-earth」 
テングワールとキアスの書き方。
*ルーン文字についての資料

今回は比較的少なかったです。 

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