ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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チャリオンの影、影の棲む城 by ロイス・マクマスター・ビジョルド

『チャリオンの影』
2004年ミソピーイク賞受賞
『影の棲む城』
2004年ヒューゴー、ネビュラ、ローカス三賞受賞

出版元の便概
http://www.tsogen.co.jp/wadai/0612_01.html


ビジョルドは軍事SF 『ヴォルコシガン・サガ』シリーズで名を馳せた作家だそうだ。この五神教シリーズはいわゆる異世界ファンタジー。手練感濃厚なストーリーテリングで物語の勢いにぐいぐいと引き込まれる。ファンタジーというより、むしろオカルト色の強い歴史ロマンスを読んでいる気分。なんでも中世スペインをモデルに構築したとのこと。なるほど納得である。

『チャリオンの影』の主人公カザリルは、政治的な陰謀の犠牲になり辛酸を舐め尽した中年おっさんで実に魅力的。決して英雄ぶることのない、分を弁えた大人の男っぷりには思わず口元が緩んでしまった。彼が指輪物語のアラゴルン並みに活躍してくれると思いきや、これが腹に魔を孕んでしまうのだから面白い。中盤からは妊婦よろしく膨らんだ腹を抱え、時にはその痛みに呻きながら苦境を乗り越えていく。……おお、なんと素晴らしいことか。

そんな傑作な本作品の中でも、思わず拍手喝采したくなった一文を引用しよう。

――カザリルは激痛をこらえた。その夜、数日ぶりに下血があり、夜毎のドント(彼の腹にとりついている霊の名前)の恋歌はひときわ破壊的だった。

大丈夫か? 私は彼がいつ股を開いてヒーヒーフーと唸り始めるだろうかとはらはらし通しだった。もちろんそんな出産シーンはなく、無事大円団となって終わるのだけれど。

そんな訳で怒涛の如く『影の棲む城』へ。
こちらは前作でおとなしく脇役を演じていたイスタ国太后が主役となっている。前作同様、神様やら魂やらとスピリチュアルなネタを手を変え品を変えつぎ込んでは、読者を飽きさせることがない。『チャリオンの影』はお家騒動を絡めた国家陰謀を巡る活劇だが、こちらは同じお家騒動でも、もっとドメスティックな愛憎劇が繰り広げられている。ハーレクイン的な要素もちらり。

大体はそんな感じで、重厚な描写の割に胸にくる重さもあまりないのだが、筆者が巧みな語り部であることは間違いない。うねる大河となって流れる物語の底には、時にアガサ・クリスティにも通じる冷徹な女性の観察眼が透けて見える。そうした揺るぎない視点が、語り手への信頼感を読者にもたらしているのだろう。



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Mercury Falls by Robert Kroese



ジャンル:ファンタジー・コメディ
対象:アダルトなシーンはないが、ギャグの中身が多少小難しいので成年向け。

アマゾン
http://amzn.to/gBQpVd

――さわりなんぞを
カルト系の取材をメインとする駆け出し記者のクリスティーンは、上司の指示によりイスラエルの過激派リーダーのインタビューを余儀なくされる。ところがインタビューの後、突然の爆撃。クリスティーンは瀕死の過激派リーダーから「黙示録のアタッシュケース」を手渡される。それをマーキュリー(Mercury)に届けてくれというのだ。マーキュリーが一体誰なのか見当もつかないクリスティーンだったが、ともかくマーキュリーと名乗るカルト・リーダーに会いに行く。現れたのは中国人相手にピンポンで遊ぶ変人。彼がカルト・リーダー「マーキュリー」。その正体はと言えば、驚くことに本物の天使だったのだ! それからクリスティーンは、黙示録に記された「アルマゲドン」計画の渦中に否応なく引きずり込まれていく。「アルマゲドン」は神々の思惑通りに進んでいくのか? 人類の未来はどうなる?

基本ドタバタギャグ・コメディ。随所に笑えるネタが仕込んであって実に楽しい。実際ギャグ漫画などは、「爆笑」というキャプションが付いていたって面白いものは本当に少ない。だから「笑える」箇所が幾つかあるだけでも作品として価値があると私は思う。たくさん笑わせてくれるほどいい。あとは下らなくたって別にいいのだが、この作品はストーリーもかなり練り込まれている。

むしろ練り込み過ぎ。前半までは気のきいたギャグやセリフでさくさくと読み進めることが出来るのだが、おそらくネタが尽きたんだろう後半、アルマゲドンのキーパーソンとなるアンチキリストを巡る攻防戦がメインとなると、笑える所が目立って少なくなる。その上で目まぐるしくもややこしい展開が延々と繰り広げられるので、話の筋について行くのが大変苦しい。読者は笑いを期待しているのだから、正直あんまりメンドクサイ仕掛けは要らないと思う。

どんな風にメンドクサイかというと、まず天界を現代の巨大組織に見立て、各種委員会や支部があり、天使たちは各組織に従属するいわば下っ端役人という具合。彼らを縛る複雑な約款やら契約やらがあり、黙示録はといえば、上位組織の委員会による長大な企画書だ。これをクソ真面目にやっていて、パロディとしては面白いのだが、反面凄まじくクドイのでめげる。

ギャグがないんなら風呂敷畳んで、さっさと終わらせてくれよ。そんな文句を言いたくなる後半部だが、全部が全部捨てられたものではない。あらゆる事をはぐらかし続けてきたマーキュリーが「みんなの不満がちょっとでも少なくなるようにしたいんだ」と主張するくだりには、胸にじわっと来るものがあった。安易な結論を回避する(少しずるいとは思うけど)エンディングも、そこそこ納得できる。もっとも、三分の一ぐらいでいいんじゃない?という気持ちは変わらないけれど。

おそらくは長々と百ページ、二百ページとストーリーを引っ張るよりも、一発笑えるギャグを捻り出すほうが遥かに難しいのだろう。それを考慮した場合、一作品に相当数の笑いがつぎ込まれている本作品はなかなかのものだと思う。ただ全体的に毒気は少な目なので、ギャグに強烈な刺激を求める人には生ぬるいだろう。

この筆者の著作は、同じくコメディー路線のものが他に二作。中でも本作品はアマゾンのレビューが突出して多い。好評を博しているようだ。

評点

読んでしまったクマ~度 ☆☆☆☆
もうこの世界に入ってしまいたい。もう現世には戻りたくない度 ☆
出家托鉢度 ☆☆
梵書度 ☆☆☆
バスタブ水没度 ☆☆☆☆☆
積んどく度 ☆


蛇足ながら私が笑えた(少なくとも面白いと思った)箇所を少し抜粋して訳してみる。ボンクラ訳で面白みが伝わりにくいとは思うが、こんな感じ。

The official logo that Lucifer’s marketing people had come up with—a vertical ellipse with horns protruding from it, encircled by a horizontal ellipse—but that logo never really took off and was rarely used anymore because people tended to confuse it with the Toyota emblem.
ルシファー(悪魔)のマーケティング部が考案した公式ロゴは――両側から角が突き出ている縦長の楕円形の周りを、横長の楕円でぐるりと囲んだものだった――だが、実用化されたことは一度もなく、後に使われることも滅多になかった。何故ならそのロゴは、トヨタのエンブレムと混同されることが多かったからだ。


“But doesn’t bringing someone back to life give you some responsibility for them? It’s like adopting a puppy. You can’t just whack the puppy with a shovel when you’re done with it”
“Why not?”
“Because you can’t. It’s just not done!”
(死体を生き返らせた堕天使二人の会話。生き返らせたものの諸事情によりすぐ殺さなくてはならない状況下で)
「だけど、生き返らせてあげた場合、その人に対して何か責任を持たなくちゃいけないんじゃない? 子犬をもらってくるようなものでしょ。始末するにしても、ショベルで殴るわけにはいかないよ」
「どうして?」
「どうしてって、できないからだよ。始末なんかできないもん!」

“Now slap me,” he said.
“OK,” she said, and slapped him across the face.
“Ow! What the Hell?”
“You said to slap you.”
“Yeah, but normal people hesitate a little.”
“Sorry. I don’t really like you.”
“Clearly. OK, now watch the screen, and then slap me,”
“OK.”
She drew her hand back to slap him again,

(クリスティーンとマーキュリーの会話)
「じゃあ僕をぶって」と彼は言った。
「オーケー」と、クリスティーンはその横顔をぴしゃりと叩いた。
「いたい! どうしてぶつの?」
「ぶってって言ったでしょ」
「そうだね。でも、普通の人はちょっと考えるでしょ」
「ごめんなさい。私あなたのことがホント好きじゃないの」
「確かにね、オーケー。ほら、この画面を見て、それから僕をぶって」
「オーケー」
クリスティーンは手を翻してもう一度彼を叩いた。






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