ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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Who Fears Death by Nnedi Okorafor

ジャンル:ファンタジー
対象:高校生以上ぐらいか。
アマゾン→http://amzn.to/cZeoKt
2010年ネビュラ賞小説部門の最終候補に残った作品。

概要

Okeke族は高貴なるNuru族の奴隷として生まれた。Nuru族はOkeke族を略奪する。その男を殺し、女を凌辱する。主人公Onyeは、Nuru族のレイプによって生まれた。性暴力によって生まれた混血児はEwuと呼ばれ、忌み嫌われる。OnyeはEwuの自分に投げ付けられる蔑視を跳ね返すため、またOkeke族の女性として勇気と誇りを示すため、伝統儀式である陰核切除を受ける。だが、まさしくその儀式の最中に、Oneyaは自分が特別な能力が有していることに気付いたのだ。母には怒られたが、儀式を共にした女の子たちと友人になることもできた。

彼女たちとの友情を深める中、Oneyaは同じEwuであるMwitaという男の子と出会い恋仲となる。Mwitaは、病を治す特別な力を有している。またAroという強力な魔法使いの弟子でもある。Oneyaは既に自身の姿を自在に変える力をものにしていたが、さらなる力を得るためにAroの弟子となる。Aroの元で学び、強力な魔法使いとなったOneyaは、Nuru族に虐げられるOkeke族の運命を定めた「偉大なる書」を書き換える決意をし、仲間と共に果てしない旅へと出立する。


場所も時代も特定されていないが(裏表紙の紹介文には終末後のアフリカとある)、この作品がアフリカを舞台とし、現代のテクノロジーを取り入れながらも、部族抗争を繰り返す彼等の姿を反映していることは明かだ。「魔法」、「変身」、「運命が書かれた書」など、おなじみのアイテムにもアフリカ独特の味付けがなされ、新鮮味が感じられる。

だが物語の中心に据えられているのは、暴力、部族間格差、レイプ、性器切除といったアフリカ固有の社会問題だ。それゆえに異世界の色は薄く、むしろ現代のアフリカの姿をそのままに描いて見せたのではないだろうかと思わせるほどだ。ここまで社会問題を鋭く問うファンタジー作品は少ないだろう。この本を三分の一程まで読み進んだ時、架空世界を描くファンタジーが、現代の社会問題を提示する有効な手段たり得るのだろうかと疑問に思った。

随分前のことなのだが、『砂の子ども』という物語を読んだことがある。イスラムの幻想文学だ。さっぱり理解できなかった。イスラムとはこのようなものかと感心し、雰囲気を掴むことはできたが、それも字の如く雲を掴むような感じでしかなかった。
これまた随分昔に何かのテキストで、「私たち黒人の言葉を英語にすることはできない」といった主張を目にした記憶がある。言語の構造、それ以上に思考の仕組みが西欧社会とアフリカ社会では計り知れないほどの隔たりがあるということだろう。だがそれを主張し続けるだけでは、アフリカの人々が何を考えているか、他の民族には謎のままだ。おそらく『砂の子どもは』イスラムの思考のままに書かれた物語なのではないだろうか。知ることは出来る。だが理解も共感も出来なかった。

だが、この作品を読むことで、OneyaやMwitaの感情、ものの見方、考え方に自分と共通するところを見出すことできた。何故Oneyaが割礼を受ける決意をしたのか? Mwitaの謎めいた行動には何があるのか? 共感とまではいかなくとも、ある程度の納得に至ることができた。そこに至ったのは、ファンタジー物語に絡めて彼等の感情と行動が描かれていたからだ。
ファンタジーというのは万国共通とまでは言えないだろうが、世界の広範囲に及んで多くの人々が共有できる枠組みだ(と私は思う)。つまり筆者は、ファンタジーという枠組みを使う事で、アフリカ社会問題を提示するだけではなく、渦中で苦しむ人々の感情、思考を、他の文化圏に住む読者に対し、より理解しやすい形で提示して見せたのだ。

アフリカの文化を「英語で説明ですることはできない」。それは真実だろう。ファンタジーの枠組みを借り、巧みな英語で描かれたアフリカは、もう真実の彼らの姿ではないのだろう。だが、閉鎖的な民族社会から、外へと自らを開くために、一旦外来の言語、思考システムを受け入れ、それを利用して自文化を内外に伝える。これは有効な手段なのだ。彼等が外の世界と共存する方法、そして彼等が抱える難問を解く方法は、今の所これ以外ないようにも思う。日本もそうしてきたのだ。……えらい大層な事を書いてしまっていたたまれないが、ともかく私はそう考えた。

作品としては荒削りな部分が多くみられる。筆致にムラがあり、中盤で話がだらけたりもするが、一貫してはち切れんばかりのエネルギーが漲っている。それがこの作品の一番の長所だろう。ファンタジーファンのみならず、多くの人に読んで欲しい一冊だ。


評点

読んでしまったクマ~度 ☆☆☆☆
もうこの世界に入ってしまいたい。もう現世には戻りたくない度 ☆
出家托鉢度 ☆☆☆
梵書度 
バスタブ水没度 
積んどく度 ☆☆



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category: 読書感想

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Invisible Bridge by Julie Orringer

対象:成年向け
ジャンル:ロマンス 大河
アマゾン→http://amzn.to/9AZ0PB

本年度オレンジ賞の候補となった作品

概要
1937年、建築家を目指すアンドラスは奨学金を得て故郷ポーランドを後にし、パリの美術大学に入学した。やがて彼は美しい年上のポーランド女性クララと知り合い、引かれてゆく。だが、クララには暗い過去があった。二人が次第に関係を深めてゆく中、花の都パリにも陰鬱な時代の靴音が近づいていた。ユダヤ人であるアンドラスと大学の仲間達は、学生ビザの延長を拒否され、帰国を余儀なくさせられる。クララもアンドラスの後を追ってポーランドへ。彼等を待ち受ける運命やいかに……。


前半はアンドラスとクララの恋愛を中心としたロマンス小説。恋愛ばかりではなく、パリでのアンドラスの生活が生き生きと描かれ、当時の学生達の姿や、建築科内の人間模様なども絡めて、興味深く読み進めることができた。ロマンス小説らしい官能描写も多少あるが、ハーレクイン的要素は薄い。

後半に入ると、二人の家族を中心に据えた、第二次世界大戦下のポーランド系ユダヤ人を描く大河小説といった風体となる。戦争が激しくなるにつれ、アンドラス達が置かれた状況は過酷さを増してゆく。次々と彼等に襲いかかる悲劇に心を痛めずにはいられない。おそらく前半で各登場人物たちの心情がよく表現されているからこそ、読み手は彼等に人間的な親しみを覚え、そうした悲劇が心の痛みとして感じられるのだろう。読んでいるうちは気付かなかったが、こうしてみると、ロマンスから戦争を中心に据えた大河へと、物語が上手く組まれていることが分かる。

少し気になったのが、アンドラスもクララもちょっとびっくりする程に善い人で、家族、友人に対し思いやりが深く、しかも才能に恵まれている。二人を取り巻く友人、家族も性格は様々に色付けされているが、おおむね善人で才能に恵まれている。そして、そうした何だか出来過ぎた人々が大体ユダヤ人側、迫害される側であり、常に彼等の視点から社会が描かれ、物語が進んでゆくことだ。

つまり登場人物に類型化が見られ、人間的な深みに欠ける。被害者、加害者を合わせた、さらに大きなパースペクティブを読者に提示していない。この作品はいわゆるエンタメなのだから、上記に挙げたところは欠点というより、むしろ読者に安定感をもたらす利点なのかもしれない。

750ページに及ぶ長編だというのに、一か月かけずに読んでしまったのだから(私にしては早い)物語の牽引力が相当に強い作品だと思う。だけど『風と共に去りぬ』は、もっと凄い勢いで読んだよなあ……と中坊の頃をつらつら思い出したりする。邦訳だったし、共通項は大河ロマンスというだけなので、引き合いに出しても仕方ない気がするが、要するにスカーレット・オハラやレット・バトラーに比肩できるような強烈なキャラが、あるいはそれに代わる別の引力がこの作品にはないのだよ。……一言でいえば佳作ということだな。

SF、ファンタジーではないのでいつもの遊び的評点はなしで。

10点評価の8点ぐらい


category: 読書感想

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洋書以外の読書メモ

三月あたりからこっちまで読んだ本をざっとメモ

『我が名はコンラッド』 ロジャー・ゼラズニイ
感想 意味不明。理解不能。
『夏への扉』 ロバート・A・ハインライン
感想 これは再読。名作だねえ。早川の表紙のねこあたまがカワイイ。たまらん。
『冥途』 内田百
感想 内田先生大好きなんだ! 感想にならない。
『夢十夜』 夏目漱石
感想 漱石はひさびさに読む。中学のころ『こころ』を読んで意味フだったのだが、今回読んでみて、ようやく私にも日本文学における漱石の重要さが分かった気がした。好きにはなれないのだけどね。

category: 読書感想

thread: 読書感想文

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Boneshaker by Cherie Priest





ジャンル: SF スチームパンク
対象: 特に制限はなし

アマゾン → http://amzn.to/77uoJ
2009年ネビュラ賞、2010年ヒューゴー賞で最終候補、2010年ローカス賞ベストSF賞を受賞している。

1989年のシアトルの地図が巻頭に挿入されている。もちろん現実のものではない。海岸沿いに逆向きの台形が『Wall』で囲まれている。それは、マッド・サイエンティストブルーが生み出した巨大穿孔機「ボーンシェーカー」の暴走による嘆かわしい傷跡だ。この「Wall」に囲まれた区画には毒ガスが充満し、被害に遭った人々がゾンビと成り果て蠢いている。ブルーが残した一粒種ゼクは行方不明となった父を探し、立ち入り禁止となった壁の中へ潜入する。それを知った母ブライアもまた、我が身の危険を顧みず息子の後を追う。

と、一応さわりまで。

レトロな雰囲気を醸し出すのに重要な背景、小道具が丁寧に描き出されている。作品の設定からダイナミックなストーリー展開を期待する向きにはまどろっこしく感じられるだろう。だが一旦慣れると、緻密な描写がなかなか心地よい。ただ毒に侵されたゾンビが集団で襲いかかってくるシーンは怖いというより気持ちが悪いので注意した方がいい。
ゾンビは一旦置いといて、ともかく全体の雰囲気が良い。懐古調の文体という訳ではない(と思う)のに、そこはかとなくジューヌベルヌっぽいのは何故だろうか。要は雰囲気至上主義でのらくらと流し読みしながら、起伏に富んだストーリ展開と仕掛けを楽しむことができる。終盤、突然物語の流れが早くなってバタバタと終ってしまうが、だらだらと続けられるよりも余程好感が持てた。

大震災から三か月、未だに福島原発の状況が好転しない我が国の現状でおすすめするのは辛いものがあるが、スチームパンクにとって重要なポイントあるレトロっぽさという点で、上々の仕上がりとなっている。

あと私的感情満載の余談になるのだけど、この作品では、汚染し尽されたシアトルの地下に無法者たちのアジトが作られ、ガスからドラッグを精製したり、汚水を飲料に変える技術を開発したりなんぞして陽気に楽しくやっている。このエピソード自体はSFによくある地下都市の設定であり、特に目新しいものでもない。ジブリの諸作品を彷彿とされる方もいるだろう。私はこの手の設定がどうも好きではない。

この作品に限って言えば、物語の要素として上手く組み込まれているので、そんなに気に触ることはなかった。ただ、それが一人歩きして何かのメッセージになってしまうともう嫌なのだ。なんか、反体制+オメーラには理解できないさ的な構えをクールに描き出す作者側の陶酔にうんざりするのだ。例えば『ナウシカ』の腐海の底にある森や、それを守るオームを現代のアンチテーゼとして提示する。その時に垣間見られる斜に構えた、それでいて上から視線で教え諭すような姿勢だ。確かに自然が徹底的に破壊された環境でもそれを上手く利用して生き延びてゆく力は自然にも人間にも備わっているのかもしれない。しかしそんな凄惨な事態が現実となる前に、最悪を回避する方向へと努力しなければならないのが現状だ。デストピアで展開されるヒロイックな夢に浸るおバカさんどもを増産するのはいい加減にしてくれ。


評点

読んでしまったクマ~度 ☆☆☆☆
もうこの世界に入ってしまいたい。もう現世には戻りたくない度 ☆☆
出家托鉢度 ☆
梵書度 ☆
バスタブ水没度 ☆
積んどく度 ☆☆







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