ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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Wicked and A Son of witch by Gregory Maguire

ジャンル:ファンタジー 大人向け


邦訳があまり日本語としてこなれていない様子だったので、原文を読んでみた。グレゴリー・マグワイアのオズシリーズ全体の構成は『Wicked』、『Son of a Witch』、『A Lion among Men』の三部作となる。今のところ、『Son of ~』まで読了した(Wicked以外邦訳はない)。

マグワイアはファンタジー作家としてはいまいちだなという印象。ファンタジーにおける異世界は徹底して魅力的でなければならないのだ。美しいものであれ、醜いものであれ。彼の描き出すオズの世界は、エメラルドシティにしろ、マンチキンランドにしろ、どれも何かしら侘しくて、ファンタジー読みは心がくたりと萎れてしまう。『Confessions of an Ugly Stepsister』の舞台であるオランダの描写の方がはるかに生き生きとしいて鮮明な映像を脳裏に残す。また、『Wicked』では、ストーリーも勢いよく流れたかと思うと、すぐに淀んでは読み手のリズムを狂わせる。作者が重点を置いているのは物語の構成ではなく、オズの異世界を通してエンボスの如くに浮き出される現代の複雑な人間社会なのだ。人種、宗教、政治、神話、そして家族。アイロニーをたっぷりと含んで描きだす筆の運びは実に辛辣だ。そして苦い。なるほど、挿絵がどこかしら、マックス・エルンストの銅版画に似ているのも頷ける。(劇団四季のHPからすると)西の魔女エルファバと北の魔女グリンダの友情に焦点を絞ったミュージカルを見て感動し、原作に挑んだ読者が幻滅するのも無理はない。

おそらく『Wicked』人気は、ミュージカルに負うところが大きいのだろう。最後の『A Lion~』を読まないうちに断定するのもなんだが、作品としては『An Ugly~』の方がよくまとまっている。
さらには、『オズ』シリーズはファンタジーであることを意識したせいか登場人物の類型化が見られる。残念なところだ。彼の魅力は少し斜め視線で捉えられた、それでいて厚みのあるキャラクタ造形にある(と思う)のだが、『Son~』となるとその厚みが半分ほどにまで薄くなってしまっていて宜しくない。

だが『Wicked』シリーズが面白くないかといえばそうではない。ファンタジーファンに対してはアピールに欠けるものの、日々量産される、型にはまりきったファンタジーにはない、つまりマグワイアにしか描き出せない「人」の姿が作品の中にあるからだ。

評点
読んでしまったクマ~度 ☆☆☆☆
もうこの世界に入ってしまいたい。もう現世には戻りたくない度 ☆
出家托鉢度 ☆☆☆
梵書度 ☆
バスタブ水没度 ☆☆
積んどく度 ☆☆☆

category: 読書感想

thread: 読書感想文

janre: 小説・文学

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