ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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リングワールド by ラリイ・二―ヴン

1970年ネビュラ賞
1971年ヒューゴー賞
アマゾン http://amzn.to/bIwDem
ウィキにも説明がある http://bit.ly/9wzZXY


さて感想だ。40年前の作品。これぐらいの古さが一番厄介かもしれない。時間が作品にほどよい褪色感を与えるにはまだ足らず、手垢がついたまま放置されたプラスチック玩具の感があり、ちょっと物悲しい。日本語にも気恥しい古臭さがあり、哀愁をそそられる。

読んでいて一番げんなりするのが、登場人物達のキャラ造形に深みがないことだ。この作品が書かれた時代のSFはどれもこんなものだったのかもしれないが、ともかくお前洗面器かよと思うぐらい底が浅い。幸運の女神を文字通り具現化したヒロインを筆頭に、英雄たるべき主人公のパイロットも確か相当の年月を生き抜いたはずなのに、どう考えてみても30代か40代そこらの好色な中年おやじのような行動を取る。しかもこのパイロットが肉体的な痛みに極端に弱い。痛みを伴う格闘技が禁止されて久しい未来だからという設定なのだけどね。

一方、作者が作り上げた壮大な仕掛けとパノラマは今でも多くの人が楽しめるだろう。次々と展開される新たな宇宙空間には心ときめくものがある。ただしそれはマクロで見た場合に限る。細部へと目を転じれば、見かけだけご立派な大建築にも似て、造り込みが粗雑でその「ちゃち」さが気になってしょうがない。確かにノウンスペースのリングワールドは当時最先端の宇宙理論や物理理論を盛大に盛り込んだ「空想科学」なんだが、何光年もの果てに辿り着いた別世界リングワールドに人間が食べられる物がちゃんと用意されていたり、豪勢なベッドがあったりして興醒めする。

もっともこの作品が出てから今までにSFというジャンルでそれこそ星の数ほどの作品が生み出され、細部は念入りに造り込まれ、心理的な掘り下げも極まってはサイコやパラサイコにまで至ったのだ。私はその上層部(流通の上層部)にある作品をわずかに読んだだけに過ぎない。だからこうした造作の粗さがいやでも目についてしまうのだろう。もし同時代に読んでいれば気付かなかったに違いない。

純文学の場合、この時代差による読み手の受け取り方の違いは、その作品に当時の世相が反映されていることの証拠と見なされ、作品の欠点とはならないのかもしれない。だが、常に未来を扱うSFでは、明らかに欠点となるだろう。旬が短いのだ。こんな粗雑な人物像や背景小道具立てでは、2010年代の読者を満足させることはできない。細部の粗さには大量消費の上に成り立つ米国的資本主義が感じられるが、それは作品の質に寄与するような類のものではない。もう少し経てばいい具合に発酵し始めるかもしれないが。

以下は、個人的なアメリカに対するイメージを元に組み立てた単なる戯言でしかない。具体的な数値や実体験を一切伴わないものだ。それでもこの『リングワールド』を読む間に感じ、考えた事の一つなので書き留めておく(こういうのを雑感と言うのだろうか)。

アメリカに渡航したことがないため、思い込みで現実とはかけ離れている可能性があるが、私はこの国が大量消費を基盤とした資本主義の上に成り立つ国だと考えている。そうした資本主義を体現したものが巨大スーパーだ。映画や海外ドラマに出てくる巨大スーパーにはどこか虚ろな薄暗さが付きまとうように感じることはないだろうか? 一体これだけの商品を誰が買うというのか。特に生鮮食料などは、大量に消費される一方で大量に廃棄されているのではないだろうか? そこに恐怖を覚えるのだ。ただ使用も消費もされず捨てられるばかりのものを経済サイクルを維持するために、あるいは資本主義の階層の上部を目指すために、作り続けリサイクルをせずに廃棄し放置する。それが当たり前という感覚が本能的に怖い。

この作品ではゴミまみれになった星を捨てて新たに移住するというシチュエーションが繰り返し登場する。ゴミだらけで住めなくなれば移住すればOk。まことに移民でできた国らしい発想で参ってしまう。そんな未来が当たり前のように来るものだと思っていたのだろうか? ゴミだらけの地球になったら宇宙に飛びだせばいい、あるいは宇宙のどこかに捨てればいいというのはお気楽過ぎる。
大量廃棄を前提とした経済サイクルはどのみち破綻するものではないだろうか? 破綻しないまでもある種の不健康さを招き寄せていたのは事実だろう。もっとも近年の経済的なあれやこれやによって、今後しばらくは宇宙ゴミ捨て場の開発や宇宙移住を夢を見たロケットの打ち上げはないだろうが。

この作品から感じられるスケールの大きさと豊かさ。星空間をも突き抜ける能天気。それは大いに魅力的なのだが、そうした魅力を相殺するかのような細部の粗雑さは明らかだ。こうした粗雑さの隙間から、何か暗く重いものがじわじわと浸食をしはじめる。この作品の魅力や特質とはあまり関係ないことなのだが、こうした浸食の前に生じるエアポケットのような空虚さに立ち竦む自分がいたことを記しておく。




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