ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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A Lion Among Men by Gregory Maguire

ジャンル:ファンタジー 大人向け

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ウィキッド・シリーズの最新作。最新作とはいっても2008年の出版。前作『Son of a Witch』はエルファバの息子にスポットを当てた物語だったが、今度はドロシーの仲間である「臆病なライオン」が主人公。前作を読んだ限りにおいては、以降王道ファンタジーの流れに沿って進んでゆくのだろうかと思わせる節があった。そういう期待を抱きつつページをめくってみると、ありゃこりゃ違ったわ。違いました。

私の考える王道ファンタジーの流れというのは、主人公が自分探しの旅をしながら全体の三分の二あたりで戦いとか、誰かの救出とかいう活劇になり、クライマックスは合戦(あるいは対決)で、大円団で締めくくるいうもの。この流れを首尾よくコントロールして、読者を気持ち良く楽しませてくれるというのが王道ファンタジーの重要ポイントではなかろうかと思う。

前作はそうした流れが確かにあった。だがそれはスムーズな流れとは言い難く、読む側からしてみれば、まるで岩がごつごつと突き出た川をゆく筏にでも乗らされてしまった感があった。そして今回はそのごつごつ感がグレードアップ。川の流れは出だしで既にスピードダウン。挙句に最後にはすっかり淀んで停滞してしまう。なんなの一体? どこにどう行き着くのこれ? ……と突っ込みたくなる流れの悪さ。そもそもエルファバとその息子の消息が物語の動力源であるのに、この二人がまったく舞台に姿を現わさない。これまでに仕掛けらた謎がある程度解き明かされ、ドロシーが去った後のオズとその周辺国の動向も描かれはするのだが、メインは臆病なライオンの情けない半生。サブメインは今までエルファバの守護天使的な役割を演じてきた尼僧ヤックルの生涯とその終焉。それで終わりか? 

終わりではなさそう。

今まで(特にこれといった根拠はないが)オズシリーズは三部作で、これが完結編だろうと私は思いこんでいたのだが、まだまだ続きそうだ。エルファバというドル箱をそのままにしておく手はないだろうし。となると、この一篇はある種の挿話的な作品なのかもしれない。スピンオフというか。

しかしまあ、王道ファンタジーの流れは横に置いといて、『Son of a Witch』で気になった人物の類型化が今回は見られず、むしろマグワイアのユニークなキャラ造形と辛辣な観察眼はよりシャープに研ぎ澄まされている。

例えば、ライオンと森の中で誤って狐用の罠に掛かった瀕死の兵士との浅い友情や、ホワイトピューマ、ムーラマ(Muhlama)とのこれまた儚く短い恋愛。奇妙に甘くて切ないこの二つのエピソードに用意された無残な結末は、アルコール度数の高いリキュールのようなカタルシスを読み手に齎す。

このライオンは、誰も傷つけたくないくせに、他者を救うための自己犠牲か、他者を傷つけての自己保身かの二者択一となると必ず後者を選んでしまうのだ。とはいえ、これは普通に生きている人の大半が身につけている習わしであり世渡りのスキルではないだろうか? でなければ普通に生きてゆけない。そうではないか? 私たちは自分のそうしたズルさには目を瞑り無い事にして生きていきたいのに、こんな哀れなライオンの(私たちの)姿を微に入り細に入り描き出されてしまってはどうにも凹んでしまう。いいように言えば、読者を凹ませるだけの力が作品にあるということだ。マグワイアはやはり、現代において際立った視点と筆力を持つ作家だと思う。

しかしこの三作目に来て、ウィキッドシリーズはファンタジー好きにとって一体何が面白いのかさっぱり分からないものになってしまった。もっとも彼は、ファンタジー好きとは異なる、また別の読者層にアピールする作家だろうと思う。例えばリリカルさで着飾った流血バイオレンスがお好きな乙女層。あるいは大島弓子やサリンジャー、星の王子様が好きな大人たち。とはいえマグワイアは何を描くにしてもふわふわのきれいなメレンゲでブツを包んだりはしないので、そういう層の中でもかなりのキワモノ好きにしか受け入れられないかもしれない。きついな。あとけっこう難しい単語を使う傾向があるので、読むのは(というか辞書引くのは)かなりめんどくさい。

評点

読んでしまったクマ~度 ☆☆
もうこの世界に入ってしまいたい。もう現世には戻りたくない度 ☆
出家托鉢度 ☆☆☆☆
梵書度 ☆
バスタブ水没度 ☆☆
積んどく度 ☆☆☆





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janre: 小説・文学

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