ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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アメリカン・ゴッズ by ニール・ゲイマン

『アメリカン・ゴッズ』
2002年ヒューゴー賞受賞

現代のアメリカを舞台に、ラグナロクを黙示録的に綴るロードムービー。とでも言おうか。アマゾンのレビュー数は少ないけれど、個人ブログの感想は結構あるので粗筋などはそちらを参考に。

乾いた、それでいて心地よい語り口に乗せられて読み進めるうちに、古い神(土着的な神話の神)と新しい神(デジタル、ネット等)の対立構図が浮かび上がってくる。そうした対立構造はもう繰り返されたものだけれど、いままでならばアブラハムの神が出てくるところに、北欧神話の古い神々を登場させたところがポイントだ。クールな透明感のある文体で、表現が極めて新鮮。さわやかな風を感じる。

一方、物語の輪郭は多少ぶれ気味で、全体の構図が把握しづらい感もあり、物語構成に秀でた作家ではないように見受けられる。だがこの文体は非常に魅力的だ。様々な神話と現代社会のアイテムを大量に注ぎ込んだ幻想世界を醒めた語り口で、比較的平易な表現にまとめ上げている。もっとも心理描写や情景描写が上手いというのとは少し違う。人をひゅっと惹きつける気のきいた文句を、苦も無く次々と生み出している点において優れているのだ。ゲイマンはこのような優れた文体でもって、どんなテーマでも魅力的な作品に仕上げて見せることができるだろう。

とまあ持ちあげたところで、このアメリカン・ゴッズの読書体験を個人的な経験に見立てて語ってみるとこうなる。

ものすごくおしゃれな男の子のエスコートで、スマートな話に酔い痴れつつ流行りのキュイジーヌを食べてお腹いっぱい、といった感じ。つまりなにかしらの夢見心地を味あわせてはもらったのだが、後に残るほど自身の感情を揺さぶられることはなかったということ。他に抜きんでた表現力という点で高く評価はするけれど、この作家のファンにはなれないだろうな。

気になるところもいくつかある。北欧神話に関しては、スノッリの『エッダ』を読んだことがあるのだが、『エッダ』は文献として残された時点で、キリスト教側からの歪曲が加えられたものだという解説が付されていたと記憶している。そうした歪曲は非常に重要なことだと思うのだが、そこに言及するところはこの作品には見られなかった。また、アメリカ大陸に入植していった人々は大体がキリスト教徒だったはずだ。エッダを胸に海を渡るアングロサクソンはちょっと考えられない。

おそらく古い神の主軸に北欧神話を据えるため、キリスト教的な要素は意図的に排除されたのだろうと思うが、主人公シャドウが樹に吊るされ、脇腹に傷を受け、再び復活するエピソードはどう見てもゴルゴダの丘のドラマの再現だ。読者はこれに感銘を受けるか、鼻白むかのどちらかだろう。私は後者だ。



追記(2/8)

少し気になって北欧神話をウィキで調べてみたら、オーディンが樹につるされ脇腹に傷を受けてるというエピソードがあった。だが、ゲイマンの描写からは、神の子が一旦死に至り、不死の者として生き返る復活劇が色濃く読み取れるように思う。ちょっと深読みしすぎかもしれないが、もしかしたらこの描写によって、ゲイマンはオーディンとキリストを重ねようとした可能性もある。難しいな。


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