ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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Boneshaker by Cherie Priest





ジャンル: SF スチームパンク
対象: 特に制限はなし

アマゾン → http://amzn.to/77uoJ
2009年ネビュラ賞、2010年ヒューゴー賞で最終候補、2010年ローカス賞ベストSF賞を受賞している。

1989年のシアトルの地図が巻頭に挿入されている。もちろん現実のものではない。海岸沿いに逆向きの台形が『Wall』で囲まれている。それは、マッド・サイエンティストブルーが生み出した巨大穿孔機「ボーンシェーカー」の暴走による嘆かわしい傷跡だ。この「Wall」に囲まれた区画には毒ガスが充満し、被害に遭った人々がゾンビと成り果て蠢いている。ブルーが残した一粒種ゼクは行方不明となった父を探し、立ち入り禁止となった壁の中へ潜入する。それを知った母ブライアもまた、我が身の危険を顧みず息子の後を追う。

と、一応さわりまで。

レトロな雰囲気を醸し出すのに重要な背景、小道具が丁寧に描き出されている。作品の設定からダイナミックなストーリー展開を期待する向きにはまどろっこしく感じられるだろう。だが一旦慣れると、緻密な描写がなかなか心地よい。ただ毒に侵されたゾンビが集団で襲いかかってくるシーンは怖いというより気持ちが悪いので注意した方がいい。
ゾンビは一旦置いといて、ともかく全体の雰囲気が良い。懐古調の文体という訳ではない(と思う)のに、そこはかとなくジューヌベルヌっぽいのは何故だろうか。要は雰囲気至上主義でのらくらと流し読みしながら、起伏に富んだストーリ展開と仕掛けを楽しむことができる。終盤、突然物語の流れが早くなってバタバタと終ってしまうが、だらだらと続けられるよりも余程好感が持てた。

大震災から三か月、未だに福島原発の状況が好転しない我が国の現状でおすすめするのは辛いものがあるが、スチームパンクにとって重要なポイントあるレトロっぽさという点で、上々の仕上がりとなっている。

あと私的感情満載の余談になるのだけど、この作品では、汚染し尽されたシアトルの地下に無法者たちのアジトが作られ、ガスからドラッグを精製したり、汚水を飲料に変える技術を開発したりなんぞして陽気に楽しくやっている。このエピソード自体はSFによくある地下都市の設定であり、特に目新しいものでもない。ジブリの諸作品を彷彿とされる方もいるだろう。私はこの手の設定がどうも好きではない。

この作品に限って言えば、物語の要素として上手く組み込まれているので、そんなに気に触ることはなかった。ただ、それが一人歩きして何かのメッセージになってしまうともう嫌なのだ。なんか、反体制+オメーラには理解できないさ的な構えをクールに描き出す作者側の陶酔にうんざりするのだ。例えば『ナウシカ』の腐海の底にある森や、それを守るオームを現代のアンチテーゼとして提示する。その時に垣間見られる斜に構えた、それでいて上から視線で教え諭すような姿勢だ。確かに自然が徹底的に破壊された環境でもそれを上手く利用して生き延びてゆく力は自然にも人間にも備わっているのかもしれない。しかしそんな凄惨な事態が現実となる前に、最悪を回避する方向へと努力しなければならないのが現状だ。デストピアで展開されるヒロイックな夢に浸るおバカさんどもを増産するのはいい加減にしてくれ。


評点

読んでしまったクマ~度 ☆☆☆☆
もうこの世界に入ってしまいたい。もう現世には戻りたくない度 ☆☆
出家托鉢度 ☆
梵書度 ☆
バスタブ水没度 ☆
積んどく度 ☆☆







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thread: 読書感想文

janre: 小説・文学

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