ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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Invisible Bridge by Julie Orringer

対象:成年向け
ジャンル:ロマンス 大河
アマゾン→http://amzn.to/9AZ0PB

本年度オレンジ賞の候補となった作品

概要
1937年、建築家を目指すアンドラスは奨学金を得て故郷ポーランドを後にし、パリの美術大学に入学した。やがて彼は美しい年上のポーランド女性クララと知り合い、引かれてゆく。だが、クララには暗い過去があった。二人が次第に関係を深めてゆく中、花の都パリにも陰鬱な時代の靴音が近づいていた。ユダヤ人であるアンドラスと大学の仲間達は、学生ビザの延長を拒否され、帰国を余儀なくさせられる。クララもアンドラスの後を追ってポーランドへ。彼等を待ち受ける運命やいかに……。


前半はアンドラスとクララの恋愛を中心としたロマンス小説。恋愛ばかりではなく、パリでのアンドラスの生活が生き生きと描かれ、当時の学生達の姿や、建築科内の人間模様なども絡めて、興味深く読み進めることができた。ロマンス小説らしい官能描写も多少あるが、ハーレクイン的要素は薄い。

後半に入ると、二人の家族を中心に据えた、第二次世界大戦下のポーランド系ユダヤ人を描く大河小説といった風体となる。戦争が激しくなるにつれ、アンドラス達が置かれた状況は過酷さを増してゆく。次々と彼等に襲いかかる悲劇に心を痛めずにはいられない。おそらく前半で各登場人物たちの心情がよく表現されているからこそ、読み手は彼等に人間的な親しみを覚え、そうした悲劇が心の痛みとして感じられるのだろう。読んでいるうちは気付かなかったが、こうしてみると、ロマンスから戦争を中心に据えた大河へと、物語が上手く組まれていることが分かる。

少し気になったのが、アンドラスもクララもちょっとびっくりする程に善い人で、家族、友人に対し思いやりが深く、しかも才能に恵まれている。二人を取り巻く友人、家族も性格は様々に色付けされているが、おおむね善人で才能に恵まれている。そして、そうした何だか出来過ぎた人々が大体ユダヤ人側、迫害される側であり、常に彼等の視点から社会が描かれ、物語が進んでゆくことだ。

つまり登場人物に類型化が見られ、人間的な深みに欠ける。被害者、加害者を合わせた、さらに大きなパースペクティブを読者に提示していない。この作品はいわゆるエンタメなのだから、上記に挙げたところは欠点というより、むしろ読者に安定感をもたらす利点なのかもしれない。

750ページに及ぶ長編だというのに、一か月かけずに読んでしまったのだから(私にしては早い)物語の牽引力が相当に強い作品だと思う。だけど『風と共に去りぬ』は、もっと凄い勢いで読んだよなあ……と中坊の頃をつらつら思い出したりする。邦訳だったし、共通項は大河ロマンスというだけなので、引き合いに出しても仕方ない気がするが、要するにスカーレット・オハラやレット・バトラーに比肩できるような強烈なキャラが、あるいはそれに代わる別の引力がこの作品にはないのだよ。……一言でいえば佳作ということだな。

SF、ファンタジーではないのでいつもの遊び的評点はなしで。

10点評価の8点ぐらい


category: 読書感想

thread: 読書感想文

janre: 小説・文学

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