ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

06/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./08

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

[edit]

trackback: -- | comment: --
page top

Who Fears Death by Nnedi Okorafor

ジャンル:ファンタジー
対象:高校生以上ぐらいか。
アマゾン→http://amzn.to/cZeoKt
2010年ネビュラ賞小説部門の最終候補に残った作品。

概要

Okeke族は高貴なるNuru族の奴隷として生まれた。Nuru族はOkeke族を略奪する。その男を殺し、女を凌辱する。主人公Onyeは、Nuru族のレイプによって生まれた。性暴力によって生まれた混血児はEwuと呼ばれ、忌み嫌われる。OnyeはEwuの自分に投げ付けられる蔑視を跳ね返すため、またOkeke族の女性として勇気と誇りを示すため、伝統儀式である陰核切除を受ける。だが、まさしくその儀式の最中に、Oneyaは自分が特別な能力が有していることに気付いたのだ。母には怒られたが、儀式を共にした女の子たちと友人になることもできた。

彼女たちとの友情を深める中、Oneyaは同じEwuであるMwitaという男の子と出会い恋仲となる。Mwitaは、病を治す特別な力を有している。またAroという強力な魔法使いの弟子でもある。Oneyaは既に自身の姿を自在に変える力をものにしていたが、さらなる力を得るためにAroの弟子となる。Aroの元で学び、強力な魔法使いとなったOneyaは、Nuru族に虐げられるOkeke族の運命を定めた「偉大なる書」を書き換える決意をし、仲間と共に果てしない旅へと出立する。


場所も時代も特定されていないが(裏表紙の紹介文には終末後のアフリカとある)、この作品がアフリカを舞台とし、現代のテクノロジーを取り入れながらも、部族抗争を繰り返す彼等の姿を反映していることは明かだ。「魔法」、「変身」、「運命が書かれた書」など、おなじみのアイテムにもアフリカ独特の味付けがなされ、新鮮味が感じられる。

だが物語の中心に据えられているのは、暴力、部族間格差、レイプ、性器切除といったアフリカ固有の社会問題だ。それゆえに異世界の色は薄く、むしろ現代のアフリカの姿をそのままに描いて見せたのではないだろうかと思わせるほどだ。ここまで社会問題を鋭く問うファンタジー作品は少ないだろう。この本を三分の一程まで読み進んだ時、架空世界を描くファンタジーが、現代の社会問題を提示する有効な手段たり得るのだろうかと疑問に思った。

随分前のことなのだが、『砂の子ども』という物語を読んだことがある。イスラムの幻想文学だ。さっぱり理解できなかった。イスラムとはこのようなものかと感心し、雰囲気を掴むことはできたが、それも字の如く雲を掴むような感じでしかなかった。
これまた随分昔に何かのテキストで、「私たち黒人の言葉を英語にすることはできない」といった主張を目にした記憶がある。言語の構造、それ以上に思考の仕組みが西欧社会とアフリカ社会では計り知れないほどの隔たりがあるということだろう。だがそれを主張し続けるだけでは、アフリカの人々が何を考えているか、他の民族には謎のままだ。おそらく『砂の子どもは』イスラムの思考のままに書かれた物語なのではないだろうか。知ることは出来る。だが理解も共感も出来なかった。

だが、この作品を読むことで、OneyaやMwitaの感情、ものの見方、考え方に自分と共通するところを見出すことできた。何故Oneyaが割礼を受ける決意をしたのか? Mwitaの謎めいた行動には何があるのか? 共感とまではいかなくとも、ある程度の納得に至ることができた。そこに至ったのは、ファンタジー物語に絡めて彼等の感情と行動が描かれていたからだ。
ファンタジーというのは万国共通とまでは言えないだろうが、世界の広範囲に及んで多くの人々が共有できる枠組みだ(と私は思う)。つまり筆者は、ファンタジーという枠組みを使う事で、アフリカ社会問題を提示するだけではなく、渦中で苦しむ人々の感情、思考を、他の文化圏に住む読者に対し、より理解しやすい形で提示して見せたのだ。

アフリカの文化を「英語で説明ですることはできない」。それは真実だろう。ファンタジーの枠組みを借り、巧みな英語で描かれたアフリカは、もう真実の彼らの姿ではないのだろう。だが、閉鎖的な民族社会から、外へと自らを開くために、一旦外来の言語、思考システムを受け入れ、それを利用して自文化を内外に伝える。これは有効な手段なのだ。彼等が外の世界と共存する方法、そして彼等が抱える難問を解く方法は、今の所これ以外ないようにも思う。日本もそうしてきたのだ。……えらい大層な事を書いてしまっていたたまれないが、ともかく私はそう考えた。

作品としては荒削りな部分が多くみられる。筆致にムラがあり、中盤で話がだらけたりもするが、一貫してはち切れんばかりのエネルギーが漲っている。それがこの作品の一番の長所だろう。ファンタジーファンのみならず、多くの人に読んで欲しい一冊だ。


評点

読んでしまったクマ~度 ☆☆☆☆
もうこの世界に入ってしまいたい。もう現世には戻りたくない度 ☆
出家托鉢度 ☆☆☆
梵書度 
バスタブ水没度 
積んどく度 ☆☆



category: 読書感想

[edit]

page top

« The Crown Conspiracy by Michael J. Sullivan  |  Invisible Bridge by Julie Orringer »

コメント

page top

コメントの投稿

Secret

page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://mithrim.blog100.fc2.com/tb.php/40-8d8a23f0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
page top
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。