ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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The Folding Knife by K. j. Parker

ジャンル:ファンタジーの範疇にはいるようだが、魔法、エルフ、ドワーフがふわふわひゅんひゅんする夢物語ではない。
対象:大人向け。ただしロマンス的な要素はゼロ。
アマゾン→http://www.amazon.com/The-Folding-Knife-K-Parker/dp/031603844X

概要

バッソーが産まれ落ちた日、一人の乞食女が二つ折りのナイフを残してこの世を去った。母から譲り受けたそのナイフを常にポケットに忍ばせ、バッソーは資産家の息子として着実に財界での地位を築き上げる。その一方で、彼の私生活は惨憺たるものだった。愛の無い結婚。才能のない息子達。姉の夫と妻の姦通を目撃し、その場で二人をナイフで刺殺する。以来、最愛の姉は弟を蛇笏の如く憎み嫌った。

やがてバッソーは怜悧な頭脳と父から譲り受けた幸運を武器に政界に進出し、一国を牛耳る程の大人物へと成り上がる。権力を尽く手中に収め、意気揚々と隣国との戦争に乗り出すが、戦局は次第に泥沼の様相を呈し始めた。

所感

近世ヨーロッパ(おそらく16~18世紀頃)のパラレル歴史人物伝――とでもいえばいいのか。幻想空想的なところは一切ない。読み始めてしばらくは感覚が掴めず戸惑った。80頁ほど進んでようやく、これはあえて設定を史実と切り離すことで、現実とは異なる視点から貨幣制度、植民地主義、議会制等を描き出し、現在の資本主義社会を再構成して読み手に提示する試みなのだと理解した。

歴史的、政治的なテーマを主軸としているのに、史実をもとにした人物伝とせず、架空世界をわざわざ作り上げたのは何故だろう。どのようにでも構築できるパラレルの中で、筆者の都合主義が露呈してしまえば読み手は鼻白む。反面、史実を元に時系列で語るとなると、膨大な頁数を費しかねない各種要素が、一人の人物の中にぎゅっと凝縮されていて、筆者のいわんとするところがより的確に伝わってくるように思えた。まあ、プラスマイナス天ビンにかけて、どちらに傾くかは読み手次第か。

私がその結果をプラスとしたのは、もっぱら主人公バッソーに与えられた人格造形の妙にある。根本的な人間性が欠落しているバッソーの壊れっぷりを淡々と描き出す筆致が素晴らしいのだ。

人間らしい感情を欠き、何事もチェス盤のゲーム、はたまた博打でしかないバッソー。己の片耳を潰した軍人、財務の師と仰ぐ宦官、自分を憎み続ける姉とその子供しか愛さず、愛せず、しかもその偏愛ぶりが痛々しくて泣ける。
現実社会にとてつもなく疎い私なので、このパーソナリティに似た人物を名指しで挙げることは出来ないが、政界、財界の大立者には、彼のような人格破綻者がいてもおかしくはないと思えてくる。このような主人公の半生に、擬似的西洋資本主義のパースペクティブを埋め込む手腕は見事と言っていいだろう。ラスト近く、地味な物語が潮の高くなるよう盛り上がり、いやがおうにもクライマックスへの期待は高まりそして――。

ササー。ササササー。潮が引いていく。

あっさりしすぎやん。

拍子抜けもいいところの軽過ぎるエンディング。これはあかんやろう。それと、私にその方面の知識が皆無だからだと思うが、貨幣制度のあーたら、こーたら、議会のナンタラカンタラの解説部分がものすごく辛かった。眠かった。

まあ、毛色の変わった、そしてある意味非常に硬派な「ファンタジー」だ。新聞によると、世界史関連本が売れているらしいから、パラレル歴史人物伝とか銘打って新しいジャンルぽくして出せば、日本国内の市場でもそこそこ受け皿があるかもしれない。もっとも冒険ファンタジー好きの方には、本書を手にされないことをお勧めする。

評点

物語の吸引力 ☆☆☆
ファンタジーの構築 ☆
説教臭さ ☆☆
もうこんなんはいらんみたいな ナシ 
びっくりしたなあもうみたいな ☆☆☆
途中で読む気がうせたりしたみたいな ☆☆☆☆



category: 読書感想

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janre: 小説・文学

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