ENDOR雑記

束、洋書関連の個人的メモ書き。

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オンライントールキン講座 受講メモ4 第二週:シッピー氏の論文

シッピー氏の論文

冒頭にルイスの「Out of Silent Plant」が引用されています。
ルイスはこの中の登場人物、ランサム(トールキン教授がモデルらしいです)に、火星で出会ったeldilaという知的生物についてこう説明させています。
「この生物はもしかしたら、人の言うところのalbs、devas、といったようなものかも知れない」

シッピー氏によると、上記のalbsという言葉は、明らかにルイスがトールキンとの交友の内に得た知識によるものだろうということです。ただ、ここでsをつけて複数形にしているところは間違っているらしいです。

そして本題です。elfという言葉が過去の文献の中でどう定義されてきたかの経緯を見ると、言葉の定義は一定でなく、混乱が見られるとのことです。シッピー氏は、そうした混乱と矛盾を、トールキンが作品の中で解決したのだと主張しています。

論文中で引用されていた文献は

・オックスフォード英辞書
・スノッリのエッダ
・グルントヴィの Nordens Mytologi
・ヤコブ グリムの Deutsche Mythologie

です。それぞれの文献の中でエルフ(ライトエルフとダークエルフ)がどのように説明されているかを簡単に書きます。

オックスフォード辞書ではalbは“チュニック、あるいは教会の衣服”とありますが、albsについてはまったく出てきません。ただ古英語(アングロ・サクソン語)にはエルフやエルフインといった単語が出てきます。これらは森エルフや、海エルフといった、他の海や山を表わす言葉と結びつけられることが多いらしいです。これらはニンフやドリアード等のラテン語を翻訳する際に当てはめられた造語だろうと単純に推測できるようです。また“elf-disease”といったネガティブな言葉がある一方、“Elf-firend"といった名前を子供につけることもあり、一律にエルフを善悪の基準に照らし合わせて定義することは難しいようです。

一方スカンナビジア系であるスノッリのエッダでは、エルフは大体、ライトエルフ、ダークエルフ、そしてブラックエルフといった形ででてくるようです。
そして、スノッリのエッダの中で、ブラックエルフとはすなわちドワーフを指すようです。ダークエルフも、おそらくブラックエルフと同じくドワーフであるとされているようです。つまり、エルフという言葉にはドワーフも含まれていたということになります。

そしてグルントヴィとなると、エルフをライトエルフとダークエルフに分けた上でその間にドワーフを挿入します。またこのドワーフはトワイライトのエルフ(薄闇のエルフ)であるとも付け加えられています。

こうした事を踏まえた上で、ヤコブ グリムは(要約すると)以下のような疑問を提示します。

1.ライトエルフ、ダークエルフとは何か?色の違いでないのならば、一体何の違いなのか

2.色が問題となっているのではないなら、何故スノッリはダークエルフをブラックエルフとしているのか?

3.ドワーフがエルフとは違うのなら、何故ドワーフはブラックエルフと呼ばれているのか?
古英語に出てくる森エルフ、海エルフ等はどういった範疇に属するのか?

4.グルントヴィの言うところのトワイライトのエルフに関する言及は他にあるのか?

こうした問いのいくつかに、トールキンはその作品の中で答えているということです。
例としてシルマリルに出てくるエオル(ダークエルフとされている)やマイグリン(ローミオン=薄闇の子という名前を父から貰う)が挙げられています。

シッピー氏は、トールキンが彼の作品で示したエルフに関する概念が間違いである可能性ももちろんあるけれども、そうした(エルフの概念の)再構築はイマジネーティブなだけでなく、厳密な文献学的な見地からなされたものであるのだと結論づけています。



category: トールキンオンライン講座 第二週

thread: 勉強日記

janre: 学問・文化・芸術

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